はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

クレーン・フェス

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市電に乗って熊本の交通センター(バスターミナル)の脇を通ったところ、あたかも熱気に包まれたフェスが行われていると錯覚するほど、数多くのクレーンやパイルドライバがじゃんじゃん稼働していた。そりゃもう、かっこよさにしびれるよねえ。その時は別の目的地に向かうために指をくわえながら通り過ぎたのだけど、当然のごとく帰り道では下車して、遠巻きからそのスケールの大きさを堪能した。
ホテルに戻ってからこのフェスのことを調べてみると、九州産交グループが主体となって取り組んでいる「桜町地区第一種市街地再開発事業」であり、約3万㎡の敷地にバスターミナル、商業施設、ホテル、マンション、コンベンション施設などが一体となった巨大複合施設をつくるとのこと。多くの自治体が参画している、いわゆるMICE施設のようだ。
熊本地震の影響で計画が遅れたようだけど、2019年夏の完成を目指して今年の2月1日に本格着工したとのことなので、現在は基礎工事が行われているのだろう。震災からの復旧もまだまだ道半ばではあるけれど、こちらの再開発ともうまくバランスを取りながら、ぜひとも成功に導いていただきたいと思った。

ドーナツターミナル

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ヨーロッパの玄関口のひとつ、パリのシャルルドゴール空港はなにかとチャレンジング。1974年の開港から一貫してポール・アンドリューという土木出身の建築家が手がけており、それぞれ特徴があるターミナルを年代を追って楽しむことができる。

その中でも最も古いターミナル1は、個人的に大好き。ドーナツ状の建物はフロアごとに役割が分かれており、出発階は低い位置に、到着階は高い位置にある。その間の階層から地下道を通って、ドーナツの外側に配置された7つのサテライトに接続している。円筒の周囲は掘り割りの道路になっており、ぐるぐる回ると上層階にある駐車場まで到達できる。サテライトにつながる地下道は、わざわざ橋として外周道路を跨いでいる。そしてドーナツの内側には、有名なSF的エスカレーター群が配置されている。

このような状況を少し想像してみるとすぐにわかると思うが、方向感覚を失うことは必至な空間構成である。それに空港に要求されやすい拡張性も全くない。でも実際にやっちゃったところが素晴らしい。そもそもその姿勢からして、かっこいいもんな。昨年の夏に離陸した飛行機の窓から全貌を見ることができて、大興奮した。

 


 

ステキ階段

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建築空間において、階段はたいへん魅力的な存在だよねえ。表情豊かな造形という点でも、移動による視点の変化でも、昇降するという意味においても。もちろん、建築家はそれを強く意識しながら、腕の見せ所と言わんばかりに力が入りまくるのだろう。チューリッヒ湖畔の公園に佇むコルビュジエ・センターの階段も強烈にステキだった。階段が中央に鎮座し、眺めても良し、歩いても良しという気合いの入りっぷり。
昨年の夏にこの建物を訪問した際、少々しくじった。オープンの時間よりもずいぶん早く行ってしまったために出直さざるを得なかったり、チューリッヒカードで入ろうとしたら適用外施設だったり。個人的に鉄筋コンクリート造のイメージが強いコルビュジエなのに、遺作となるこの建物ではスチールが用いられていることにも面くらった。しっかり調べてから行くべきだな、自分。
ステキな階段もさることながら、透明感や解放感に溢れる実際の空間も素晴らしかったし、忍者屋敷のような扉の開き方も楽しかったし、自然光がうまいこと採り入れられている地下での写真展もほっこりしたし、屋根を溶接で構築した後に各種パーツをボルトで組み立ててつくったらしい製作方法も楽しめるし。またチューリッヒに行くことがあれば、再訪したいな。