はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

単線モノレール

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先日、湘南モノレールを体験してきた。乗るのも見るのもあまりにも楽しかったために、終点の「湘南江の島駅」まで行ったにもかかわらず、夏の海を体験することをすっかり忘れてしまった。

千葉都市モノレールと同様の軌道から車両を吊す「懸垂式」なのだが、街の中でのスケール感はまるで異なる印象を受けた。バス以上で電車以下という雰囲気のコンパクトさで、ちょうどよい感じ。もちろん、軌道の上に車両を載せる跨座式よりは大柄だけど。

その印象は、2車線かつ十分な歩道幅員がない道路の上空を、「単線」で通っていることに由来しているのだろうね。複線の千葉都市モノレールと比べると、橋脚が圧倒的に小さくおさまっているし、沿線の建物の軒先が近く感じる。すれ違いが駅部でしか行えないことから運行間隔などに制約があるのだろうけど、そのくらいがちょうどいいバランスなんじゃないかと思ったな。

それと、軌道の線形が単線だとスッキリきれいに見えるってのもいいね。特に大船駅を出てすぐのS字カーブが描くラインは、とてもすてきだった。煩雑になりやすい桁外側の垂直補剛材が、連続性を強化してよい方向に効いていると思ったな。

 

カオスな斜面

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鹿児島県にある鶴田ダムによる大鶴湖畔の道路を通っていたら、突然、まるで現実感が無い空間にポンと放り出された気分になった。現地で目の前の風景がVRゴーグルで見たCGなんじゃないかと思ったけど、あらためて写真を見てもやっぱりCGだったんじゃないかと思う。

ちょっと見ただけでも、異なる勾配が多数混在している。さらに、モルタル吹き付け、種子吹き付け、法枠工、ロックボルト工など、多数の工法がパッチワーク的に混在している。道路線形も縦断勾配の変化がとても奇妙に感じた。全体的に時空がゆがんでいる感じ。

なんでこうなったのかはよくわからないけど、地すべりで元の道路が崩壊し、道路の線形を山側に振って再整備したんじゃないかと思う。その際に、様々な土質に合わせた安定勾配で切土し直して、それぞれの斜面を様々な工法で安定させた、と言ったところだろうか。災害時の緊急対応に追われて、破れかぶれに勢いでやったのかなあ。

斜面安定工としては決して褒められたもんじゃないと思うけど、混沌とした魅力を感じた。時々あるんだよなあ、この言葉では表現しにくい悩ましい感情。

海上都市の領域

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前回エントリの投稿後、学生時代に撮影した膨大な調査写真をずいぶん前に当時在籍していた研究室から引き上げたようなことを思い出して、職場の棚の最上部に押し込んである段ボール箱に手を突っ込んでみた。すると驚いたことに、「アクアポリス」の写真があっさり見つかった。写真の裏には「1993」の文字が刻印されているので、僕が大学4年生のときだとわかる。その当時の状況がどんなものだったかを、少しだけ思い出すことができた。よくぞ撮っていて、よくぞ残していたな、えらいぞ自分。

あらためて1975年の沖縄国際海洋博覧会のシンボル「アクアポリス」をネット上で調べてみると、いろんなことがわかる。菊竹清訓の設計であることはなんとなく知っていたが、手塚治虫がプロデュースしていたことは知らなかった。まあ名前を借りただけなのかもしれないが。閉館したのは、なんと1993年とのこと。僕はその直前に訪れていたわけか。どうりでボロボロな印象だったわけだ。

海上都市の建造は、大きな国家プロジェクトだったんだろうから、土木学会編「土木工学ハンドブック」「土木用語大辞典」や海洋土木大辞典編集委員会編「海洋構造物」などにはもっと詳しい情報があるのだろうと思って、次々と引っ張り出してみた。ところが、アクアポリスに関する記述が全然見つからない。石油掘削施設や海底ケーブル関連、さらには海中展望塔の記載はたっぷりあるのに。アクアポリスは「半潜水型浮遊式海洋構造物」とされているが、もしかすると「土木」ではなく「船舶」のテリトリーなのかもな。それとも、まさか「都市」なのか。