はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

水を制する堤

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筑後川の下流に「デ・レーケ導流堤」と呼ばれている港湾施設がある。筑後川の幅を狭めることで流速を早め、土砂が堆積しにくい状況をつくり出し、航路として必要な水深を確保するというもの。干満の差が最大で6mもある有明海ならではの工夫だね。

オランダから招いたお雇い外国人のヨハネス・デ・レーケの指導に基づいて、1890(明治23)年に完成したんだそうな。近代化土木遺産を少し歩けば、必ずデ・レーケに当たるよね。もしかすると日本の国土整備において、弘法大師空海より活躍した人物なんじゃないかな。時代はぜんぜん違うけど。

満潮時には水没してしまう見た目はたいへん地味なので、感動ポイントは写真では伝わりにくいと思う。僕自身も以前から興味は持っていたものの、積極的に見ておかねばならないとはそれほど感じていなかった。しかし、現地では時間的スケールと空間的スケールに圧倒されてしまい、しばらく絶句しつつじっくり眺めた。いやあこれは、モーゼもびっくりするくらいの素晴らしさなんじゃないかな。

ところで最近、「導流堤」という呼び名は間違っていた、というニュースを耳にした。あらためて記事を見直してみると、両岸にある突堤こそが「導流堤」であり、「制水工」という表記が正しいことが判明したという。なんだかわかったような、わからないような。「水制工」と呼ぶ突堤もあるので、混乱しちゃうね。

佐賀新聞:筑後川石積み建造物 建設当時は「制水工」
産経新聞:筑後川の「導流堤」、実は「制水工」 地元研究者が調査

 

嘉瀬川くん

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逆三角形に配置された三点があると、人の顔に見えることがある。これは「シミュラクラ現象」という言い回しで広く知られている。

佐賀県にある嘉瀬川ダムのオリフィスゲートと空気管らしき2つの丸い穴は、いかにもそれっぽく感じられる。しかも、( ゚ロ゚)ハッ!!としているように見える。どうやら彼は、たいていのことにうっかり驚いてしまうキャラのようだ。そんなに焦らずに、堂々としていていただきたいよねえ、ダムなんだから。

地を這うモノレール

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湘南モノレールは起伏が多い地形との関係がとても面白い。中でも最大の見せ場は、トップスピードで山岳トンネルに突入する場面だと思う。いやほんとびっくりしたよ。都市にあるはずのモノレールが、なんのためらいもなくトンネルに突っ込んでいくんだもの。

その他にも、地表を一部開削して地面すれすれを駆け抜ける部分も楽しかった。それが地上からはどう見えるのかが気になって、途中駅を降りて少し歩いてみた。すると、補剛材のリブがバリバリに入った桁が視線の高さに現れて大興奮。遥か上空にあるはずのものが目の高さにあるんだもの、楽しいよねえ。そして、ワクワクしながらモノレールの通過を待っていると、ついにその時がきた。

あれ?あれれ?なんだか迫力がないな…。というか、普通の電車にしか見えないじゃないか…。

つまり懸垂式モノレールの魅力の源泉は、車両の直下の空間にあるということに気がついた。そして、いまさらなにを言っているのかと、自分を問いただした。