はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

段差の更新履歴

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職場の近所を通る私鉄の切土区間にある跨線橋。鉄道の建築限界をクリアするために、少々無理をしながら路面位置が持ち上げてられている。この様子には事情が積み重なっているような気がして、個人的にはがっちり心をつかまれた。そこで現状を観察しながら、アプローチ部のスロープが歩んできた歴史を妄想してみよう。あくまでも憶測だし、事実を調べるつもりもないけど。

スロープの下端部にはアスファルトがこんもり盛られている。ひょっとすると最初は階段だけでスロープは後から付け足したんじゃないかと思ったのだが、全体の勾配が緩いので当初からスロープがあったと考える方が自然だ。とりあえず、下端部のコンクリートが欠損して、その補修がアスファルトでなされていると解釈しておこう。

次にスロープ上面のテクスチャーの違いもたいへん気になる。中央部はわりと平滑なんだけど、両サイドは洗い出し仕上げのように骨材がむきだしになっている。これは積極的に2種のテクスチャーを混在させたわけではなく、オリジナルのスロープの幅は狭くて不便だったので、両側にコンクリートを盛り付けることで拡幅されたのではないだろうか。既設階段に打ち足すのは締め固めが難しいのか、ずいぶんボロボロになっているし。

そのようにスロープが拡幅されたことで、勇猛果敢にバイクに乗ったまま歩道橋を渡る人々が現れたのだろう。比較的近年に設置されたと思われる危険行為を抑止するための看板や路面が、鮮やかに掲げられている。そして、それでもバイクの進入を抑制できなかったのか、スロープの上下端にラバーポールが設置されている。しかも、路面の「原付」という文字を覆い隠す位置に。結果的に自転車の利便性は、当初の狭い幅員のスロープと同等に戻っちゃっただろうね。

その他にも、なんで壁が傾斜しているのかとか、なんでブロック塀の直前に車止めがあるのかとか、なんで線路の直上に投物防止柵が設置されていないのかとか、気になる点は多々ある。でも、そこらへんも謎のままにしておこう。また観察する機会があれば、その時にまた楽しもう。

昇降グラデーション

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大阪湾の高潮から市街地を守る木津川水門。アーチ状の巨大バイザーゲートを有する、強烈なインパクトがある1970年につくられた構造物だ。大胆な構造システムや近未来的な造形テイストなどからしてみると、1960年につくられたオランダのハーゲスタイン水門を参考にしているような気がする。上下流の向きや素材などがまるで違うけどね。調べておかなきゃと思いつつ、すっかり忘れていた。

感激ポイントはたっぷりある。その中でも、個人的に最も体験してみたい箇所は、側面にある昇降路だな。特に、上屋から降りてみたい。最初はフラットな床が階段になり、やがて梯子になるという除変トラップ。ドキドキしながら降りてみたいな。

 

 

技術革新が奪った仕事

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先日FBを見ていたら、友人が近所の廃料金所ブースを紹介していた。この近くはたまに通っていたはずなのに、いままで気付かなかった。自分の不明にちょっとした悔しさを抱きつつ、あらためて通勤時に寄り道してみた。

実際に稼働している自動精算機レーンの隣に、コーナーにアールがあしらわれた友人ブースの料金所が残されている。その味わい深い様子から、彼はテクノロジーによる世代交代をしっかり受け止めながら、淡々と歴史を積み重ねていことが感じられる。できれば、さらに向こう側に完全にナンバー自動読取装置で完全自動化されたレーンをつくって、彼がレジェンドとして脚光を浴びてほしいものだね。

それにしても、見どころがたくさんある。もともとのフォルムやプロポーションもかわいいし、存在感がある室外機が従属する関係もすてきだ。さらに、テントが張られていたのであろう屋根のフレームの様子とか、複数の種類が感じられる鉄板の錆の進行の仕方とか、隙間の目張りの仕方とか。写真の逆側には車が衝突してできたと思われる凹みまである。

環境の変化によって一線を退いたとしても、別の生き様を見せてくれる彼の場合は、老害なんかじゃない。このように余裕をのある楽しさを包含してこそ、真の「働き方改革」なんじゃないか。