はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

懸垂姉妹

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たいへん画期的な姉妹提携が実現する運びとなった。あの「湘南モノレール」と、あの「ヴッパータール空中鉄道」が姉妹提携を締結するというのだ。懸垂式モノレールファンとしては、この上なくめでたい話。なにしろ僕も昨年、双方の懸垂式モノレールをたっぷり堪能したのだから。

昨年の秋からはじまった湘南モノレールを異次元に楽しむWEBサイトの「ソラdeブラーン」に参加させていただいたことが引き金となって、どうしてもドイツのヴッパータール空中鉄道を見に行きたくなってしまった。なんとか年末の時間をやりくりして現地に行ったことはすでに遠い過去のような気がしてならない。この提携話を聞いて、早くもまた行きたくなっている。今度こそ本格的なツアーをやりたいなあ。もちろん『ヨーロッパのドボクを見に行こう』のツアーコース(TOUR B|ドイツ西部巡回コース、p.98 - p.103)をトレースして。

湘南モノレールオフィシャルサイト|ヴッパータール姉妹提携

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5万人の意味

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佐賀県立博物館で7月25日からスタートした「すごいぞ!ボクの土木展」は、ちょうど1ヶ月目で入場者数が5万人を突破する見込み(追記(9/3):全期間での最終数は、約6万8千人とのこと!)だという。「土木」という一般的ではない企画テーマで、人口約24万人の佐賀市という地方都市での開催にもかかわらず、この数字は関係者もびっくり。なぜこんなに爆発的な人気が出ているのだろうか。振り返るにはまだ早いけど、気になっていることをメモとして残しておく。

人気の理由のひとつに、「酷暑の夏休み」ってのがあるかもしれない。冷房が効いている場所で、そこそこ長い時間子どもを手放しで遊ばせることができて、しかも無料ってのは、若いお父さんお母さんにとってはパラダイスなのだろう。そのような環境要因から、口コミとリピートで来場者数がますます増えているというのはあり得る。

とは言え、もちろんコンテンツがビシッとはまらなければ、そんな現象は起こらないわけで。展示室に入ろうとしても押し流される嘉瀬川ダムの放流(waterfall)、鳥栖ジャンクションをくるくる流れる寿司(おすしとすし)、壁から突き出た三角コーンを光らせながら工事現場音を奏でるDJブース(club DOBOKU)、もちろんいつものダムカレー(ダムとカレーと私)など、本気でふざける方向に振り切った展示物がたくさんある。それら並んで、アクティブな体験ができる展示物、スタイリッシュな展示物、心に刺さる展示物、学習要素のある展示物などが、単管パイプやトラ柄テープとともにちりばめられているのだ。ここら辺の幅の広さやみっちり感や熱量が心地よく、混沌で雑然とした雰囲気の中で野趣味のあるテンションが高まってくるのだろう。かわいらしいグラフィックデザインが、それらをやんわりまとめ上げていることも大きなポイントだ。

土木の行為をお題として、様々なクリエーターに展示作品を制作していただくというフォーマットは、2年前に六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催された「土木展」がオリジナルだ。この時も大きな話題になり、多くの方々に楽しんでいただけたと感じているのだが、否定的な意見も多くいただいた。特に土木を専門とする方々や、アート方面の方々や、土木マニアの方々から。その多くは的確だったし、次につながる要因にもなっている。まあ「自分がイメージする土木展とは違う」というだけの話を一方的にされたり、観に行ってもない人からアレはダメだと言われて呆れることもあったが。いま振り返ってみると、たしかに企画も展示内容も暗中模索だったことは否めない。その証拠に、巡回展という位置付けでグローバル展開を果たした「土木展 in 上海」では、展示の方向性やスタイルが共有され、突貫施工を感じさせないまとまりの良さが生まれていたように感じた。

このような素地があった上で、フランチャイズとも言える形で佐賀にローカライズしたバージョンが今回の展示だ。地に足がついている、つまり、地域の風土がしっかり骨格を構成していることで、本気でふざけることが可能になったと考えられる。やはり土木ってのはそもそも土着性が強いので、地方開催ってのはとても馴染むのだろう。それに地元の方にとっては、他人事ではなく自分事だもんね。また、佐賀に行かなければ見られないというプレミアム感も、たいへん素晴らしいものだ。

だからといってどんな地域でも可能というわけではない。無茶を許容できるフレームと人のネットワークがなければ実現しないことは事実だろう。今回は、主催である佐賀県の内部に受け皿となる仕組みがすでに醸成されていたこと、佐賀所縁のクリエーターのネットワークが存在していたこと、「肥前さが幕末維新博覧会」に絡めることで予算化できたことなど、タイミングが良い方向に重なったという背景も極めて大きいだろうね。

六本木の「土木展」は、土木業界関係者でもその存在を全く知らないという人がとても多かった。グローバルな情報はなかなか届きにくいものなのだろう。それと比べると、多くの地元の業界関係者は着目しているようだ。タイアップイベントもじゃんじゃん行われているし。ローカルな情報はローカルのネットワークで回りやすいのかもしれない。もちろん、主催者の立場の違いや入場料ありなしという違いは圧倒的に大きいので、一概に比較することはできないけれど。

正直なところ、今回の展示でもまだまだこなれていない部分は多々目に付いたし、実際にそれらをうっすら口出ししたことも多々ある。そこにはまだまだ乗り越えられない制約や、関係者間の意識のばらつきや戸惑いなど、様々な問題が横たわっている。つまり、まだまだレベルアップが可能なんだと思う。さあ、次はどこでどんな展開が待ち受けているのだろうか、今からワクワクするね。おっとその前に、9月2日(日)の閉会まであと1週間。興味のある方は、焦りながら佐賀に行こう。

愛くるしい塔

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脳天気に晴れ渡った空の元で、たいへん夏らしい港の風景を撮ることができた。しかし、その主役たる博多ポートタワーは、頭でっかちで短足というなんとも垢抜けないフォルム。中心にはごついエレベーターシャフトがあって透過性も何もないし。つまり、タワーとしてのカッコよさがほぼ感じられない。

あ、いやいや、否定するつもりは一切ないんだよ。むしろ愛嬌あふれるその姿に、すっかり魅了されてしまったんだよな。なんというか、媚びる姿勢や鼻につく態度が一切感じられず、かわいさ余って黙ってサポートしたくなるような。

設計したのは「塔博士」として名高い内藤多仲。名古屋テレビ塔、二代目通天閣、別府タワー、さっぽろテレビ塔、東京タワーを手がけて、最後に博多ポートタワーで締めくくっている。まあ締めくくるという意図があったかどうかは知らないけど。どのタワーにも共通したテイストが感じられるよね。

僕が若い頃は内藤多仲のタワーシリーズがそれほど好きではなかったのだが、ここ10年ほどでグッと心が惹かれるようになってきた。なんだろうね、この感情の変化は。おじいちゃん的なものかもね。