はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ペデ

絶妙なリング

先日札幌に出張に行った際、今年の夏に開通したばかりの「アクティブリンク」に立ち寄ってきた。病院、ホテル、分譲マンションなどのビル群の谷に位置しており、それらの2階部分を楕円のような形状で連結する空中歩廊だ。場所はかつて僕が働いていた新札幌…

セーヌ川に架ける橋

またまた古いフィルム写真から。1999年にパリを訪れた際には、供用を目前に控えて静的載荷試験中だったレオポール・セダール・サンゴール橋(当時の名称はソルフェリーノ橋)を訪問した。それは、設計者のマルク・ミムラム氏に現場で解説していただくという…

インテグラル・ブリッジ

たしか1999年の、僕が30歳になる直前のこと。当時会社勤めだった僕は、主に橋のデザインを調査する視察団に混ぜていただき、大学の先生や実務家などとともに、コペンハーゲン、シュツットガルト、パリの3都市を1週間かけて巡るという体験に恵まれたことがあ…

建築の橋

流山おおたかの森駅の前に、新たなビルがつくられた。その外側には開かれたバルコニーのような階段が付帯しており、とても気持ちの良い眺望体験によって、駅前広場の空間を印象的なものにしている。 既存の建物とは、緩やかな円弧を描くデッキで接続されてい…

ラッピングX字歩道橋

X字の横断歩道橋もそれなりに珍しいが、それが補修工事の足場で半分だけラッピングされているとなると、見に行かないわけにはいかない。しかも、近所だし。この交差点は夜に車で頻繁に通るので、気になってはいた。昼間にちゃんと見に行かねばと常々思って…

キノコ岩橋

構造エンジニアのユルグ・コンツェットが携わったアルプス山中のトレッキングコース「Trutg dil Flem」には、同氏が設計した歩道橋が7つ架かっている。そのうちのひとつに、ものすごく深く狭い箇所を跨ぐ橋がある。英語名は「Mushroom Rock Bridge」であり、…

特殊歩道

シュッとした白い二連アーチを持つ広島の太田川大橋は、その自転車歩行者道がものすごく特徴的で、これを渡ることによって橋梁景観の体験が豊かになる印象を持った。なにしろそのシークエンスがとても印象的なので。 写真奥の左岸側は、下流側の車道よりもわ…

廃墟に刺さる折鶴

ブリストルに宿泊した翌朝、再開発が進められているブリストル・テンプル・ミーズ駅の東側を、エイボン川に沿って少しだけ散策した。昨年完成したばかりというセント・フィリップス歩道橋(St. Philips Footbridge)を見るために。事前にたまたまチェックし…

遺跡をつなぐ橋

イギリス人が大好きなアーサー王の生誕地なんじゃないかと噂されている、コーンウォール地方のティンタジェル。浸食作用で中間部分が崩落したという13世紀のティンタンジェル城の遺跡を再びつなぐように、今年の夏、ローラン・ネイが手がけた新たな橋『ティ…

リフト付き歩道橋

高低差がある街ではときどき、歩道橋付きのリフト、もしくは、リフト付きの歩道橋を見ることがある。ヨーロッパの街ではえらくかっこよく仕立てられてものもしばしば体験できる(例えば、バーデン:緑の中の昇降、ロールシャッハ:駅前エレベーター橋、エッ…

消える橋

最近、あちこちで長崎の「出島表門橋」が話題になっている。日本の橋梁界で最も権威がある土木学会の「田中賞」も受賞しており、以前から見に行かねばと思っていた歩道橋だ。国指定史跡である出島の復元に関する事業の一環で、ネイ&パートナーズジャパンの…

本当のチェーンブリッジ

チェーンブリッジと言えば、ハンガリーのブダペストを貫流するドナウ川に架かる吊橋「セーチェーニ鎖橋」。いつか見に行きたい。それはさておき、ブータンでは鉄の鎖そのものに金網を載せて、それらを針金で結束するという、まるでアスレチック遊具のような…

南国の空中歩廊

今年の年始に行った2度目のシンガポールでは、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの上空に架かる吊橋「スカイウォーク」を体験することができた。前回は意気込んで現地まで行ったのに、風雨のため直前で閉鎖されてしまったため、ようやく念願が叶ったことになる。 …

自然を引用した楕円

スイスアルプスの渓流沿いを歩くトレッキングコース「Trutg dil Flem」には、ユルグ・コンツェットが設計した7つの歩道橋が架けられている。それらの橋は美しい渓流を様々な角度から楽しみ尽くすための重要な視点場として設えられており、それらの橋自体が…

世界的な歩道橋

数年前に九州に行った際の写真をほじくり返す機会があったので、その最中に大事な橋を再発見した。川口衞が設計した、別府の南立石公園の脇に架かる「イナコスの橋」だ。その構造形式は「サスペンアーチ式不完全トラス構造」とされているが、正直なところ僕…

悪魔の橋

昔から人は自分が理解できないものを、神や悪魔の仕業として位置付けようとする。どうにもならない難所に超絶テクニックを用いて架けられたことで、「悪魔の橋」と呼ばれる橋梁は世界中にあるだろう。有名どころでは、スイスのゴッタルド峠の近くに架かる橋…

繊細なトラスが架かる街

僕がドボク旅行を計画する際には、ぜひとも行きたいという大きなアンカーポイントを最初に設定し、それらを結ぶように周辺地域のサブコンテンツを探していくという方法を採っている。オーストリアのフェルトキルヒという街は、そんな中で経由地としてピック…

薄い板

スイスのフライエンバッハという街の南にある、高速道路の上空に架けられたビルヒェルヴァイト(Bircherweid)歩道橋。高低差がある場所を驚異的に薄い板だけの構造物は、なんと1965年につくられた世界初の吊床版歩道橋だという。少々道に迷いながらたどり着…

緑の中の昇降

チューリッヒから電車で15分程度で行けるバーデンという街に、いろいろなミスを重ねてしまって1時間以上かけて到着した。お目当ては、市街地とリマト川の高低差を解消するリフト付き歩道橋。駅前の傾斜地につくられた人工地盤に接続している。 茶色のトラス…

駅前エレベーター橋

ボーデン湖畔のロールシャッハという街に、駅と駅裏の住宅地との高低差を解消するリフト付き歩道橋があるというので行ってみた。これが、ミニマルで雑味がない造形と仕上げの中に知的な色気を織り交ぜるという、いかにもスイスっぽいかっこよさを存分に体現…

風変わりなトラス橋

オーストリア西端エリアのブルーデンツの街はずれに架かる、Alfenz Bridgeという風変わりなコンクリートトラス橋。先日紹介したSchanerloch Bridgeと同様に、Marte.Marte Architektenという設計事務所が手がけている。 河川の合流部に架けられているためか、…

技術の重ね方

スイスのViamala渓谷に架かる吊床版橋のPunt da Suransuns。それぞれの部材が、恐ろしいまでに薄く、細く、単純。構造家のユルグ・コンツェットが手がけた橋梁は、ギョッとするほど極端に研ぎ澄まされたミニマル・デザインであり、その意味を理解して受け止…

アウトドア派の階段橋

5年前にスイスを訪問した際は、主にダムや橋を巡ったために、人里離れた山奥に行くことが多かった。そこでびっくりしたことは、トレッキングやサイクリングなどのアウトドアライフを楽しんでいる方々が、どこに行っても老若男女を問わずたくさんいたこと。 …

味わい深い木橋

愛媛県内子町にある山間の小さな集落に、「田丸橋」という屋根付きの木製歩道橋がある。1944(昭和19)年に架けられた木橋なのに、しっかり現役。構造部材の補修補強や屋根のふき直しなどの手が入りつつ、オリジナルの姿がちゃんと維持されている。雨をしの…

歩道橋付き堰

パリ郊外。セーヌ川に合流する少し手前のマルヌ川に、堰とセットになった「サン・モーリス歩道橋」が架かっている。路面全体が太鼓橋のようになっており、全体的にエレガントな雰囲気が漂っている。装飾も多いし。マルク・ミムラムが手がけた橋を見ると、フ…

国境を越える過剰な橋

マルク・ミムラムがデザインした、歩行者と自転車のための「Passerelle des Deux Rives」という斜張橋。直訳すると「両岸をつなぐ歩道橋」というストレートで当然な意味になっちゃう。まあこれは、ライン川の両岸にあるフランスのストラスブールとドイツのケ…

インテグレーション

先週はローラン・ネイの話を直接伺う機会がいくつもあった。その中で彼は、随所に「インテグレーション」という言葉をちりばめていた。前回に引き続いて、再びアムステルダムのフルハトハーフェン橋(Vluchthavenbrug、2012)を眺めることで、彼の「インテグ…

明確な歩車分離

ものすごく久しぶりに仙台を訪れた。これまで何度も立ち寄ったことはあるのだけど、たいてい目的地ではなく経由地だったので、ほとんど印象がないままだった。今回は少し街を歩いてみようと思い、用務の翌日に時間を確保していたのだが、あいにく雨に降られ…

みんなでつくった黄色い道

先月訪問したロッテルダムでは雨の中、2015年にクラウドファンディングによってつくられたばかりの総延長390mの木製歩道橋「ルフトシンゲル(Luchtsingel)」を鑑賞してきた。25ユーロの出資につき1枚、壁高欄の木材に名前が刻まれているらしい。デジタル的…

モーゼの奇跡の顛末

僕が2011年にオランダを離れてすぐに話題になった(ArchDiaryの記事)濠の水面の下を歩く体験ができるという「モーゼ橋(Moses Bridge)」を観るために、西ブラバント・ウォーター・ラインのFort Roovereという稜堡を訪問した。なんで僕が住んでいるときに完…