はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

メモ

被災地メモ

先日射水市を訪れた晩は、富山に来たというのに訳あって広島風お好み焼きを食べた。その店のカウンターで隣にいた地元の方と楽しくお話しした際に、すぐ近くに地震による液状化の被害が出たエリアがあるということを伺ったので、翌日訪れることにした。 そこ…

内川再訪

先月の初め頃、富山県射水市に根ざしてまちづくりを実践している十年来の友人夫妻より、彼らの会社が運営している古民家一棟貸し宿に遊びに来ないかとお誘いいただいた。どうやら能登地震の影響で、富山の観光業もコロナ禍よりも深刻な状況になっている様子…

趣味としての写真

昨年末、思いつきでカメラを新調した。これまでずっとマイクロフォーサーズという規格のカメラを使ってきたのだが、センサーサイズが大きいフルサイズのカメラを買ってみたのだ。思いつきにしては大散財だったが、自分の中のなにかが切り替わった気がしてい…

寝正月日記

本年元日に発生した能登半島地震で被災されているみなさま、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。特異な地理地形に起因する困難な状況の中で、救出や支援に従事されているみなさま、ご安全に活動できるようお祈り申し上げます。収束どころか被害の全貌…

私的ドボク大賞2023

今年はブログ記事が極端に少なかった。コロナ禍の余波で、ここ数年は出張や旅行が激減している。つまり、インプットの機会が少ない状況が続いている。そのため、風景を読み取る感度は弱体化し、アウトプットに向き合うエネルギーも枯渇しがちだったように思…

なんと、ドラマ化

拙著『日常の絶景』が、テレビ東京によりドラマ化された。本書を知る人は「なんで?」「どうやって?」と訝しんだことだろう。もちろん、僕も含めて。登場人物やストーリーなどは一切ないし、世間的にはマイナーで素っ気ない対象を扱っているし、妄想を含め…

グリーンランド上空にて

羽田とヘルシンキを結ぶ便は、行きも帰りも北回りルートだった。言うまでもなく、現在はロシアの上空を迂回して、距離的にも時間的にも遠回りせざるを得ない。もしかして帰りは南回りになって、世界一周ができるんじゃないかなと期待を込めて思っていたのだ…

夏の旅の大団円

この夏は、およそ3年半ぶりに海外旅行に行ってきた。行き先はフィンランドのヘルシンキとエストニアのタリン。コロナや円安や戦争などの影響で跳ね上がっている渡航費を少しでも浮かせるべく、貯まっていたマイレージでお得な航空券を半年以上前にゲットした…

橋をデザインする

橋の設計に携わる若い読者を想定した「橋をデザインする」という本が出版された。橋の設計を多角的に捉えながら「コンセプチュアルデザイン」という視座を獲得していただくために、さまざまな角度から実際の橋の設計事例をたくさん取り上げて、その設計思想…

暗渠に架かる橋

このたび「暗橋(あんきょう)」という概念が開発された。地下に追いやられた川や水路、いわゆる「暗渠」に架かる、あるいは架かっていた橋のことだ。親柱や高欄の一部が残されていケースもあれば、橋の名前が交差点名などに残されているケースもある。この…

私的ドボク大賞2022

あまり簡単には認めたくないところではあるが、早くも2022年が終わろうとしている。あっという間だった気もするけれど、今年の前半に起こった出来事は遠い昔のようにも思える。記憶が離散してしまう前に、例年通り、「私的ドボク大賞」を開催することで一年…

構築家の展覧会

ふと気付くと、もう10月。行こう行こうと思って油断していた「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」がもうすぐ終了してしまうという焦りから、目の前にある仕事を薄目でやり過ごして、重い腰をあげて行ってきた。これがうわさ通り、とても素敵な展覧会だ…

『ヨーロッパのドボクを見に行こう』新装版

ドボク系旅行ガイドブック『ヨーロッパのドボクを見に行こう』が、このたび新装版&電子書籍版となって帰ってきました!!なかなか気楽に国外に出られる状況ではない今日この頃ですが、本書で海外旅行気分を少しでも味わっていただけると幸いです。 ライフサ…

旅の呪い

昨晩から突然、海外旅行をしたいという欲求が高まってしまい、たいへん困惑している。振り返ってみると、2019年末のイギリス旅行以来、海外旅行の機会をつくっていない。パンデミックの渦中にあって、できる限り海外旅行のことを考えないよう努めてきたが、…

ナイトシティ

現在『サイバーパンク2077』というゲームをプレイしている。過去に『ファイナルファンタジーⅦリメイク』や『デス・ストランディング』という超大作を通じて近年のゲームのすごさを堪能したが、またしても刺激的なゲーム体験をしているところだ。 例によって…

私的ドボク大賞2021

今年の個人的な締めくくりは、やはり「私的ドボク大賞」で。13回目となるこの賞は、僕がその年に体験したドボク的ネタを振り返り、僕が感激したものを自薦して、僕が選考・表彰するという、誰の共感も求めない自作自演のアワードだ。 昨年に続いてコロナ禍の…

日常の絶景

『日常の絶景 知ってる街の、知らない見方』という本が出版された。室外機、高低差、避難階段、通信鉄塔、消波ブロック、ダムなど、都市を形成しているのに見過ごされがちな15の断片にフォーカスを合わせて、妄想を交えながらリアルな世界の設定をトレースし…

滑り込みアウト

先週末は出張で仙台に行ってきた。少し無理をすれば日帰りできたのだが、どうしてものんびりとまち歩きをしたいという欲求が抑えられず、宿泊を選択をした。それが大アタリで、活きのいいネタをたくさん仕込むことができた。若干の悔しさを伴って。 たとえば…

世界の設定

小説、演劇、映画、ゲームといった創作物では、その世界観を構成する要素のパラメーターを、創造主がルールとして設定している。例えば、主人公の性格の形成要因とか、物体に作用する重力のありようとか、ドラゴンの生育環境とか。その設定が強固でなければ…

オリンピックの思い出

ミュンヘンのオリンピックタワーから見下ろすと、フライ・オットーが手がけたユニークな吊り屋根が点在するオリンピアパークはもちろん、広々とした緑地や選手村をベースとした団地、さらにはBMWの本社やミュージアムなどが一望できる。オリンピックが都市に…

名称表記問題

海外の土木構造物を紹介する場面では、名称表記問題にたびたび直面する。現地語と英語のどちらを採用するか、アルファベットとカタカナのどちらを採用するか、正式名称と通称や俗称のいずれの表記を採用するか。そもそも参照する資料によって名称が異なり、…

橋梁デザイナー

今夜放送されたテレビ東京「新美の巨人たち」に、橋梁デザイナーという立場の方が取り上げられた。エムアンドエムデザイン事務所の大野美代子さんだ。僕にとっては極めて大きな存在の方で、以前何度かお会いする機会に恵まれたのだが、たいへん残念なことに5…

サイバーパンク景観

『サイバーパンク 2077』というゲームが発売は昨年12月に発売された。信じがたいほどにつくりこまれた世界観とグラフィックは、極めて魅力的。しかし、暴力的なアクション成分が高そうなために、怖じ気づいた僕はプレイしていない。 そもそもサイバーパンク…

エンジニアリングとデザイン

エンジニアリングとデザインの世界をざっくり分けて見た場合、どちらにも中途半端に足を突っ込んだことがある立場としては、基本理念というかアプローチが違うと感じることが多々ある。それはその人が受けてきた基礎教育の方向性に起因しているのではないか…

林檎教への入信

現在僕は、Apple社の製品およびサービスを全面的に受け入れる体勢、つまり、アップル信者になる準備を進めている。 僕のMac歴はそこそこ長く、1990年代前半から使うようになり、有名なボンダイブルーのiMacは1998年の発売初日に入手した。仕事の都合でWindow…

私的ドボク大賞2020

多くの人と同様、今年は僕にとっても極めて特殊だった。自他ともに雰囲気で取り繕ってきた「常識」のようなものがボロボロと崩れ去っていく様子を目の当たりにし、さまざまな面で本質的な見直しを迫られるようになった気がする。刷新できる環境はさっさと変…

よいデザイン

先月88歳で死去したテレンス・コンラン卿が設立し、2016年に現在の場所に移転したロンドンのデザインミュージアム。その常設展「Designer Maker User」の入口に、「CROWDSOURCED WALL」という壁面がある。そこには、さまざまなジャンルを跨ぐ小物が、所狭し…

配達が切り拓く世界

スイスアルプスの峠を越える送電線の写真を、あれこれ編集してみた。「デス・ストランディング」というゲームの感動的で示唆的な仮想世界を、少しでも自分の実体験に近づけようとして。この送電線を見たときにも、隔てられた世界が「つながっている」ことに…

今年の夏

なぜか、8月が終わりかけている。毎日たっぷり暑さを感じてはいるものの、夏の実感はまるでない。しばらく休日らしい休日を過ごしていないことも大きな要因だろうが、ほとんど外に出ない生活によって、インプットとアウトプットのバランスがくずれているこ…

街角の間にあるもの

この夏、ついに三土たつおさんの編著『街角図鑑』の続編が登場する。その名も『街角図鑑 街と境界編』だ。4年前に登場した前作は、新たな街の見方がてんこ盛りで、謎の興奮が凝縮された本だった。本作ではそれがしっかり継続されているだけでなく、スケール…