はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

地形

見事な扇状地

昨年の秋に札幌に行ったとき、飛行機の窓から絵に描いたような扇状地を眺めることができた。胆沢川によって奥羽山脈が削られ、その土砂が放射状に堆積したというジオスケールのダイナミズムが、視覚的に理解できる。 このような地形はたいてい水はけがよく、…

人工物上の天然湖沼

先日、某所でお話ししたとき、インフラ景観の魅力について「人知を越える自然に必死に抵抗するための叡智の集積」といった表現を用いたところ、来場者の方に猛然と抗議された。その時は彼のお怒りポイントがさっぱりわからなかったが、おそらく、土木事業に…

荒野の電波塔

東京が生み出す大量のゴミによってできた新たな地形「中央防波堤」を、東京港を巡る船から眺めると、その標高の高さに愕然とする。そして、人口の荒野の向こう側にあるスカイツリーは、まったく見たことがないような眺めになっている。東京港ってすぐそこに…

道半ば

東日本大震災の津波によって、信じがたいスケールの被害を受けた陸前高田。まるごとなくなってしまった街を再生するための高台造成工事が、現在も粛々と進められている。そのための大量の土砂を素早く運ぶためにつくられた仮設のベルトコンベアが、本日で引…

どこまでも人工空間での生活

アムステルダムが面するアイ湖(IJmeer)は、もともとゾイデル海(Zuiderzee)だった水面を、締め切り大堤防・アフスライトダイク(Afsluitdijk)によって淡水化した「人造湖」だ。その中に、アムステルダムの土地不足を解消すべく「人工島」を構築し、そこ…

リエージュの大階段

2020年東京オリンピックのエンブレムの件で、いきなりフィーチャリングされているベルギーのリエージュは、地形の変化が楽しい街。魅力的な坂がそこら中にある。さらに、カラトラバによるリエージュ=ギユマン駅やグレイシュによるPays de Liège橋などの見ど…

日本のオランダ

今年の大型連休は、秋田に滞在した。かつて自分が設計に関わっていた橋梁や道路を巡るとともに、この地に根を生やした大学の同期に会うためだ。各所で素晴らしい体験ができたので、すっかり秋田ファンになってしまった。 その際、いつか訪れたいなあと思って…

欧州の大きな谷

欧州の谷って、日本の谷のイメージとはだいぶ雰囲気が違う。簡単に言ってしまえば、スケールの違い。日本の場合は極めて繊細かつ急激に変化する微地形が絶え間なく表層を覆っていることに対して、欧州の場合は広大な丘陵地と幅の広い谷がゆったりと繰り返す…

山を越える道

ここ数日、スイスの写真を見返している。アルプスの自然の絶景はもちろんすごいんだけど、そこに道路が入った風景も、これまた強烈なインパクトがあるね。アルプスの山と谷の急傾斜と、車両の走行が可能な線形が、ギリギリのせめぎ合いを繰り広げた結果なの…

復興ドボク

週末に陸前高田で開催された「復興ドボク見学会」に参加し、はじめて東日本大震災の被災地を視察した。いまさらなにをとあきれる方も多いと思うが、僕としてはようやく気持ちが整ってきたタイミングで、ちょうどいいチャンスをいただけたと思っている。震災…

魅惑の四叉路

あまり四叉路という言葉は聞き慣れないが、まあ十字に交わる交差点のことが一般的だよね。でも、世の中にはひとつの道が3つに分かれる四叉路もある。というか、僕は写真の現場を見て、こんな分かれ方もあるのか!とびっくりした。 ルクセンブルク市内にある…

川の流れ

ハフィントンポストに「なぜ川は、曲がって流れているの?アニメで解説【動画】」という興味深い記事があった。川が蛇行するメカニズムをわかりやすく解説している動画の紹介記事だ。 この動画を見て、今年の正月にシベリア上空で見た川を思い出した。ぐねぐ…

空飛ぶ地下鉄

僕の勝手な「セーヌ川の架かる橋梁」ランキングでは、メトロ6号線と歩車道のダブルデッキ橋である「ビル・アケム橋」がいつもトップ争いをしている。1905年につくられた鋼アーチ橋の上に、鉄道の鋼ラーメン桟橋が乗っかっているのだ。その直下にある自転車道…

神の仕事

2006(平成18)年7月、主に鹿児島県の北部を流れる川内川流域は記録的な豪雨に見舞われた。その規模はすさまじく、中流にある鶴田ダムが「計画規模を越える洪水時の操作」に移行せざるを得なかった、つまり、ダム湖がすっかりおなかがいっぱいになってしまい…

崩れた土砂の崩れ

たいへんありがたいことに、滅多なことでは立ち入ることができない日本アルプスの巨大スリバチ「立山カルデラ」に潜入させていただいた。このエリアは関係者以外立入禁止のうえ、11月から5月は雪に閉ざされてしまう超ハードな防災最前線の現場なのだ。一般人…

海岸を守る円弧

最近知り合った富山に住む友人に勧められて、生地(いくじ)という街を訪問した。彼は「まず、海に向かいなさい」とまるでお告げのように言っていた。その通りに延々と下新川海岸に向かって歩いた結果、びっくり構造物を拝むことになった。お告げは正しかっ…

アートエリア内の砂防堰堤

昨日までの4日間、長野と新潟の砂防やダムなどを「取材のため」と称しながらじっくり巡った。「遊びじゃないんだよ、仕事なんだよ」と、ほとんど意味のないうわごとを、ウキウキ気分が激しく先行する自分に言い聞かせながら。 今回の旅は再訪する対象が多く…

平地コンプレックス

愛媛県宇和島市の「遊子水荷浦(ゆすみずがうら)の段畑」を訪問した。急峻な地形の輪郭が、ジャガイモの葉の緑と石垣との鮮やかなコントラストが生み出すコンターによって可視化されている。これほどインパクトのある景観は、そうそう見られるものではない。…

サイボーグ化した岩盤

アーチダムってのは膨大な水圧をアーチ構造で受けて岩盤に伝えるため、両岸が頑強な谷にしかつくれない。このため、アーチダム鑑賞の際は、ドーム曲面の美しさを愛でるとともに、堤体が突き刺さっている大地のがんばりがひとつの見どころである。 なかでも長…

岬の上の小さな村

イタリアの構造設計家のリッカルド・モランディが設計した「Lussia Bridge(Ponte Morandi)」は、構造のおもしろさと凛としたたたずまいから、個人的な「死ぬまでに体験しておきたい橋梁ランキング」の上位にいつも位置していた。2年前に2ヶ月間ほどミラノ…

ローマ劇場

リヨンの街には結構な高低差があって、丘の上から眺めるパノラマはなかなかのもの。建物の高さと屋根の色がビシッと統一されている街並みは、日本では見ることができない景観なので、じっくり味わいたい。 その丘の傾斜を利用した古い半円形劇場がある。築年…

アルプス越え

現代の私たちは、雄大な氷河や名峰が連続するスイスアルプスならではの絶景の数々を、比較的容易に目撃することができる。なぜなら、そこに峠道があるからだ。どれほどの苦労の末にこの道がつくられ、維持されているのかに思いを馳せながら、峠越えをしたい…

地形由来工場

工場好きには言わずと知れた駅前超優良物件、安中の亜鉛精錬所。出張ついでに久しぶりに3回目の訪問。 臨海部の工場もいいけど、内陸部の工場ってのもいいよねえ。傾斜地を占領している要塞感がたまらないよねえ。地形つまり重力を利用した施設ってのは、プ…

風車の風景

稚内に出張に行ったついでに宗谷丘陵に立ち寄ってみると、予想をはるかに超えた興奮状態に陥った。なんだこの地形、なんだこの牧場、なんだこの風力発電。これまで見たことがない風景が延々と広がっており、これをどのように解釈すればいいのか全くわからず…

南仏大観音

2年前、エッフェルが設計したガラビ鉄道橋から、カラトラバが設計したリヨン・サン=テグジュペリTGV駅のに移動する途中、ほぼ思いつきでル・ピュイ=アン=ヴレ(Le Puy-en-Velay)という街に立ち寄った。妙に尖った地形が気になったので。 わりと大きめの…

切通し交差点

川崎市を通る国道246号に、「切通し」というストレートな名前の交差点がある。先日、近くを通りかかったので、歩道橋の上からじっくり眺めてみた。すると、さもありなんと納得してしまうほど、丘陵をズバッと切り裂く見事な切通しを確認することが出来た。 …

地層展示

南房総市に建設された農道「安房グリーンライン」の最南部、安房白浜トンネルの北側坑口付近にある切土法面がすごい。約200万年前の巨大地震の痕跡である「海底地すべり地層」を生鑑賞することができるのだ。 海底で起こった大規模地すべりによる地層の崩壊…

大地の断面

年末から風邪を引いてしまい、数日間すっかり寝込んでいたために、体がこわばってとてもつらい状況になっていた。これをなんとかしようと、1泊2日で東京湾ぐるり一周「大地の断面」新春ツアーを敢行した。千葉の自宅を起点に、房総の採砂場や採石場をいくつ…

くもじい気分

少し前の話だけど、釜山から戻ってくる飛行機から、放流している黒部ダムの姿をはっきりと拝むことができた。とんでもないところにとんでもないものをつくったんだなあと、あらためて感じ入った。あの黒部ダム(地上からの様子はこちら)を空から見下ろすな…

貯水槽のある風景

たまたま釜山郊外の谷間の街にLRTで行く機会があった。高架になった駅を降りると、そこは貯水槽パラダイスだった。青系のタンクを中心に、ときどき黄色が混じっていて、とてもかわいらしい。 街区がグリッドで構成された街を歩くと、わりと強引に傾斜地を開…