はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

壁面

壁に現れた痕跡

最近気になっている鉄道高架下の歩道を囲むコンクリート擁壁。ここにはさまざまな痕跡が積層して現れており、訪れるたびに新たな魅力が発見できる。 擁壁の天端に降った雨が描く縦ライン、壁面への落書きに上書きした塗料の重なり、生乾きのペンキが重力によ…

壁の観察

数年前に山口市民会館で観察した壁。天端に降った雨水が流れる様子が可視化されている。 一番上に当たる最初の鉛直面は全体的に風雨に晒されているためか、比較的均質にグレーの色がついている。斜めの面になると、その切り合い点でいったん水が溜まり、ある…

抽象画の意図

コロナ禍の影響で、自分自身のインプットとアウトプットのバランスが大きく崩れたことは自覚している。昨年末に『日常の絶景』を出版できたこと自体は、大きなアウトプットとして大いに意味があったと思うのだが、インプットの量が圧倒的に少なくなっていた…

肌荒れ

湿度が下がる冬期は、お肌の乾燥が進んでしまい、なにかとつらくなる。うるおいを与えたつもりでいてもいつの間にかカサカサになってしまっていたり、じわじわと広がるかゆみから無意識にボリボリ掻いて表皮を傷つけてしまったり。こうして言葉にするだけで…

更新履歴

あるビルの壁面に、さまざまなパイプ、ケーブル、換気口、窓などの設備が複雑に入り組んでいる。その縦横無尽でアクロバティックな様子を眺めていると、それぞれの登場人物が、お互いに文句を言いながらも、尊重しつつ、共存しているように思う。そして、自…

室外機コレクション

先月の上海訪問でも、いくつか室外機コレクションを鑑賞した。自分史上、上海と室外機は切っても切れない関係にあるのだ。上の物件は、個別の室外機のバリエーションが豊富で、配置には粗密があるというのに、全体的に整った伸びやかな印象をもたらしてくれ…

ステキ倉庫

倉庫の壁面って、時間が経つにつれてじわじわくる。立体駐車場がもたらしてくれるモヤモヤに近い感覚。全体的にヒューマンスケールからはずれているのに、ちょっとした隙に親しみが表れるツンデレなところとか、たいへんステキだよねえ。間接的に「人の都合…

カオスな斜面

鹿児島県にある鶴田ダムによる大鶴湖畔の道路を通っていたら、突然、まるで現実感が無い空間にポンと放り出された気分になった。現地で目の前の風景がVRゴーグルで見たCGなんじゃないかと思ったけど、あらためて写真を見てもやっぱりCGだったんじゃないかと…

あからさまな斜面の強化

鶴田ダム再開発では、新たな放流設備の設置に伴い、堤体下流右岸側の斜面の勾配をググッときつくする掘削工事が行われたとのこと。そこで露出した斜面の安定を図るために、コンクリートによる法枠工に加えて、グラウンドアンカーによってガチガチに固められ…

まちの記憶の更新

熊本市役所のすぐ近くのアーケード街にひょっこり姿を現した「ダンメン」が、たいへん見事で感激した。通行人の多い繁華街だったので視線が若干気になったんだけど、しばらく佇んでじっくり鑑賞せざるを得ない迫力だった。 建設以来はじめて露出したであろう…

ガンタ積み

昨年の夏に六本木でチラリと見た衝撃的な擁壁を、あらためてじっくり見に行ってきた。「再利用」されている材料は多種多様であり、そのサイズや形態もバラバラのため、極めてカオスな擁壁面になっている。そこには、凝灰岩、花崗岩、安山岩などの自然石、レ…

擬窓

ミラノのドゥオモにアプローチする通りにて。 心ない落書きは、いくら僕でもそれなりに心が痛む。でも、落書きの消し方が雑すぎてさらに心が痛む。でも、そんな落書きも窓の部分は避けていて少しほっこりする。でも、よく見るとその窓は実物ではなく、ペンキ…

透かしブロックの用例

『街角図鑑』の「透かしブロック」の項を眺めていて、建築材料として盛大に用いている例をふと思い出した。秋田市立体育館(愛称:CNAアリーナ★あきた)のエントランスホール部だ。 階段や通路の側壁に、「松」と呼ばれている透かしブロックがみっちり配置さ…

雨水のリズム

これほどの水汚れはなかなかお目にかかれない。下見板のように断面が斜めになっている塀の上に載せられた瓦を伝った水滴が、長い時間をかけてリズミカルで柔らかい文様を描いている。水平方向の段差によるシャープな陰影とのコントラストがいいね。富山県氷…

水が描いた縞模様

札幌で見かけた微妙にゆるい縞模様が描かれた壁面。線路をくぐるトンネルにアクセスするスロープなんだけど、おそらく設計者は意図していない模様だろう。 この擁壁の外側はレンガ風タイルによって化粧されており、結構な厚さの天端にも同じ素材がみっちり貼…

更新履歴の可視化

これまで何度も高岡を通過したのだけど、落ち着いて向き合う機会はなかったのだけど、ようやく街を散策することができた。やはり、内川や氷見と同じように、ダンメン天国だった。 その中でもびっくりした物件が上の写真。側面にダンメンが現れていることはい…

ピカピカ足場

光輝く工業製品が、これでもかと言うほどみっちりと並べられている光景に、ぞわぞわした。しかも縦方向なので、なおさらだ。 ちなみにこの高層集合住宅、朝は写真のようなスケルトン状態だったが、夕方には表面にパネル材が貼られ、マッシブな箱に変貌してい…

緑化エクスキューズ

沼津で見かけた駐車場。溶融亜鉛メッキのスチールで構成された簡素なつくりだけど、2階デッキのプランターをベースにしながらつる性植物で緑化しようとしている。しかも垂直ではなく、「ランダム」に見えるラインで。それらは、あまり生長していない。 右側…

美しい汚れ

先日、「錆っていいですよね」と若い方に言われたので、調子に乗ってそのメカニズムや美しさについて熱弁をふるったところ、ドン引きされるに至った。まあそれはいつものことなので許容する(していただく)として、どこかで見た錆汁がらみの素敵な汚れを思…

パッチワーク建築

倉庫として使用されていると思われるこの物件は、キュートすぎる。テクスチャー、カラー、プロポーション、ディテール、ダンメン、どこを見ても完璧だよねえ。本当に愛くるしい。射水市を訪問するたびに、魅力的な物件に大量に出くわす。どんだけポテンシャ…

豊かなテクスチャー

一ヶ月ほど前のこと。一関から陸前高田に向かう道中、素敵な石灰工場に出会った。なんと言えばいいんだろう、形態と壁面とテクスチャーの関係が絶妙すぎてたまらない。一見すると無計画なトタン・パッチワークのように感じるけど、全体も部分もしっかり整っ…

内川のダンメン

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。早速で恐縮ですが、昨年の積み残しからスタートします。 昨年度の後半から、富山でのプロジェクトがスタートして、月イチくらいのペースで訪問していた。たまに自由な時間を持てることもあった…

見方を変えるトレーニング法

ものの見方を変えるという行為は、様々な場面でとても重要になる。何かをデザインするときや、アイデアを生み出すときなどはもちろん、見方を変えることによって気分を高めたり、生活を楽んだりすることだってできる。吸収力が高い若い方々に向けて、僕は折…

水門コンポジション

たまたま見かけた防潮水門の裏側のリブが、モンドリアンの「コンポジション」に見えてならない。(類例:下町のモンドリアン) 愛媛県大洲市の肱川河口にある長浜大橋を見に行ったのだが、その橋詰付近でこの真新しい防潮水門を見つけてしまい、目にやり場に…

本気の石積風

富山市に合併された旧八尾(やつお)町の今町地区は、地形的にとてもユニークな成り立ちをしている。神通川に合流する井田川とその支流の間の狭隘な河岸段丘に、直線の街路と短冊状の敷地を持つグリッド街区が形成されているのだ。しかも西側は急傾斜地にな…

巨大なコンクリートの網

先週の土曜日、長野県小谷(おたり)村で開催された「ドボクアート砂防ダム巡りバスツアー」に参加してきた。これがとてつもなくキレキレのツアーで、すっかり興奮しまくってしまった。詳細は、気分次第でまた後日。 ツアー終了後、他の参加者のみなさまと別…

神々しい駐車場

千葉の宝のひとつ、そごうのぐるぐる駐車場タワーの中央部。 未来世紀ブラジルのラストシーンに登場した発電所のクーリングタワーの内部にも似た眺めであり、二重らせんのスロープを定着しているアンカーが壁に点々と並んでいる様は、天に昇るような荘厳な気…

大地の断面

年末から風邪を引いてしまい、数日間すっかり寝込んでいたために、体がこわばってとてもつらい状況になっていた。これをなんとかしようと、1泊2日で東京湾ぐるり一周「大地の断面」新春ツアーを敢行した。千葉の自宅を起点に、房総の採砂場や採石場をいくつ…

トリノのダンメン

昨年の今頃は何をしていたのかなとふと気になってカレンダーを見てみたら、11月後半に入居したミラノのアパートをはじめて離れ、2泊3日でトリノに行っていた日だった。あれからまだ1年しか経っていないとは驚きだ。この短い旅はネタが豊富に得られたんだよな…

売り上げがある壁

昨日、待ち合わせの時間まで少し余裕があったのでその周辺を散歩をしていたら、自販機によるバリケード、もしくは、仮囲いを見かけた。角地のビルがなくなり、さらに跡地の駐車場もなくなり、そうした寂しさをどうしても埋めたくなったのだろうね。こうなっ…