はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

形態

名建築

本日は強風が吹き荒れる晴天の中、珍しく目白方面を訪れた。事前に目的地へのルートをGoogleマップで確認していたところ、「東京カテドラル」の文字を見つけた。何十年も前から見に行かなきゃと思っていたのに、なぜかその一線を越えていなかった大傑作。こ…

エレガントな吊橋

また古いフィルム写真から。1999年にデンマークを訪れた際に、前年の1998年に完成したばかりのグレートベルト・イースト橋という長大吊橋を見に行った。中央支間長1624mは当時、数ヶ月前に完成した明石海峡大橋に次ぐ世界2位の長さを誇っていた。 現地で解説…

様式の理由

1852年につくられたロンドンのキングス・クロス駅。しばらく前までこの周辺は治安が悪いエリアだったらしいが、現在は再開発が進んでオシャレな人気スポットになっている。隣接するネオゴシック様式のセント・パンクラス駅に比べるとやや地味に感じるものの…

高低差の折り合い

狭い敷地の中で円弧を描くように高低差を解消している階段とスロープ。エッジの効いた段差と滑らかな曲面の対比は、得も言われぬ緊張感がある。周辺も含めたコンクリートのブルータルな造形とテクスチャーが、より印象強いものにしている。 なんというか、こ…

静かな採石場

松山の石手川ダムのフーチング。その巧まざる立体構成が見事すぎて、胸が高鳴る。 ダム堤体の大きなカーブとフーチングの直線、極めてシャープでダイナミックな陰や影、コンクリートのかたまり感と手すりや植生に見られる繊細さ、岩盤の複雑なテクスチャーと…

ブロックノイズ的立体構成

ダムの堤体が地山に接続する箇所は「フーチング」と呼ばれており、その様子は千差万別である。ダムの見どころはたくさんあるけれど、個人的には強く惹かれる箇所だ。覆土や緑化によってその存在を上手に隠しているものもあれば、全く無頓着で生々しいコンク…

ポツダムの塔

昨日は終戦記念日もしくは終戦の日だったので、なんとなく気になって、その成り立ちについて復習してみた。1945(昭和20)年7月26日に米英中により発せられたポツダム宣言を受諾して降伏したのは、2つの原爆が投下されてソ連から宣戦布告がなされた後の8月14…

石切場アパート

アントニ・ガウディによる高級集合住宅「カサ・ミラ」は、外観から細部に至るまで、海をイメージしたという奇抜で緻密な造形で構成されている。僕の写真では少しも伝わらないが、やはりここでもガウディの卓越した造形力が遺憾なく発揮されている。 ところが…

ガウディの教会

アントニ・ガウディの最高傑作とも言われる、バルセロナの郊外サンタ・クローマ・ダ・サルバリョーにあるコロニア・グエル教会。玄武岩の柱状節理をそのまま使った斜めの柱や、レンガのアーチや天井のリブ、有機的な形状からなるステンドグラスや椅子など、…

愛くるしい塔

脳天気に晴れ渡った空の元で、たいへん夏らしい港の風景を撮ることができた。しかし、その主役たる博多ポートタワーは、頭でっかちで短足というなんとも垢抜けないフォルム。中心にはごついエレベーターシャフトがあって透過性も何もないし。つまり、タワー…

特殊なアウトプット

長崎の出島表門橋は、とても微妙なバランスで成り立っている。 出島側は土地自体がほぼ国指定史跡の遺構なので、橋台を置くことができない。このため桁は、浮かび上がらんばかりに優しくタッチするだけになるよう、江戸町側の橋台をカウンターウェイトとする…

三角形の集合体

大正駅の高架ホームからまる見えのダブルワーレントラスの木津川橋梁。先日の岩崎運河橋梁と全く同じスペックの双子橋なのだという。構造や材料に多少の余裕が生じても設計を一回で済ませる姿勢から、単純化や標準化への切実な願望を感じるね。 それにしても…

山岳教会

ヴッパータール空中鉄道を訪れるついでに、周辺エリアで見ておきたいものがいくつかあった。そのうちのひとつが、1972年につくられたゴットフリート・ベームによるマリエンドーム・ネヴィゲス(Mariendom Neviges)という巡礼教会。記憶が定かではないけれど…

浮きテント

ケルンで見たフライ・オットーによるダンス場の膜屋根は、たいへん感動的だった。絶妙な緊張感を伴って宙に浮かぶテントの姿は、まるで魔法を見ているようだった。60年前の1957年につくられたというから、さらに驚く。特別に耐久性が高いわけではなく、時々…

目と心の保養

デュッセルドルフに来た。たぶん3回目になるのだけど、これまでは雨に降られたり、目当ての橋が改修工事中だったりと、なかなか満喫できなかった。まあこちらもエッセンやデュイスブルクなどへの通過点としか捉えてなかった気もするので、お互い様ってところ…

図面的理解

スナップ写真などと違い、建築写真は水平や垂直がビシッと補整されることが多い。言い換えると、網膜上に投影される像とはずいぶん異なる「理想状態」が示されていることが多い。もちろん、良し悪しや好き嫌いの話ではない。人為的に構築された環境がどのよ…

プレキャスト城

岡山県津山市に宿泊した昨日の早朝、津山城郭の一端にある「津山文化センター」までお散歩してきた。アクの強いこの建物が街中にあったらギョッとするだろうけど、街を見下ろすロケーションにはとてもふさわしいと思ったな。 四面すべてを構成しているプレキ…

富士山型橋脚

湘南モノレールには独特の形状の橋脚がある。まるで富士山を意識しているかのような二等辺三角形のフォルム。もちろん交差物件に起因する様々な制約から決定された形態だとは思うけど、結果的に湘南モノレールを紹介される際によくロケーションとして使われ…

かげのカーブ

昨年の札幌訪問時に少し時間が空いたので、サイクルシェアリング「ポロクル」を利用して、かつて自分が設計に関わった「北郷通こ線橋」を数年ぶりに見に行った。 桁下に自転車を止めて周囲を歩くと、すぐに側道上空をスパイラル状に跨ぐスロープが落とす影に…

レガシー

「レガシー」という言葉はスバルのレガシィが真っ先に思い浮かぶこともあり、オリンピックなどの文脈で使ったことはない。まあその前に、なんとなくではあるけれど、個人的には「遺産」のイメージが先行してしまうので、現役施設に適用することをためらっち…

イタリアの造形

完全な主観ではあるけれど、イタリア人の造形力って特別にすごいと思う。街中に溢れる具象彫刻はもちろん、建築物も、自動車も、彼らが生み出してきた立体物の造形には、ついついうっとりさせられてしまう。 ネルヴィが設計したパラッツェット・デッロ・スポ…

入りたかった体育館

なんとなく体育館ネタが続いているついでに、まだアップしていなかったネタを。 2011年のクリスマスの日に、バチカンのサンピエトロ広場でローマ教皇のお言葉をいただいた後に見に行ったパラロットマティカ(PalaLottomatica)という競技場。1960年のローマ…

三角体育館

丹下健三とタッグを組んで数多くの名建築を生み出した構造家・坪井善勝が、単独で設計した体育館が下関にある。1963(昭和38)年につくられた下関市体育館は、全体を通じて三角形の変奏曲といった雰囲気が生み出されていて、そのフォルムはスター・デストロ…

地下へのいざない

押上<スカイツリー前>駅のA1出口は、やんわりとしたカーブが見事だよ。先の見通しがきかないことって不安感を抱かせることが多いように思うけど、ここは期待感を持ってしまう。 そういえば地下鉄の出入口って、「出口」と呼ぶのはなんでだろうか。単純に管…

ひねる理由

昨年の夏、オーストリアのドルンビルン川に架かるSchanerloch橋というかっこいいコンクリート橋を見に行った。桁下面がねじられた造形になっていたのだが、現地を観察してもその理由がよくわからなかった。もしかしたらエンジニアリング面での理由はなく、オ…

ドリアンのパターン

総合芸術文化施設のエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイは、その特異な見た目から「ドリアン」と呼ばれている。ドームの表面が三角錐のような形状の日よけで構成されているのだけど、これがたいへん刺激的であり、抵抗感がある人はたくさんいそうだ…

自然を引用した楕円

スイスアルプスの渓流沿いを歩くトレッキングコース「Trutg dil Flem」には、ユルグ・コンツェットが設計した7つの歩道橋が架けられている。それらの橋は美しい渓流を様々な角度から楽しみ尽くすための重要な視点場として設えられており、それらの橋自体が…

国境の屋根

この夏に通過した、オーストリアとリヒテンシュタインの国境にある施設。やたらと薄くシャープに見える板と、たった2本のやたらと細く見える柱で構成されたキャノピーは、重力に逆らう魔法がかけられているように見える。本体となるガラス張りの施設はスケ…

風変わりなトラス橋

オーストリア西端エリアのブルーデンツの街はずれに架かる、Alfenz Bridgeという風変わりなコンクリートトラス橋。先日紹介したSchanerloch Bridgeと同様に、Marte.Marte Architektenという設計事務所が手がけている。 河川の合流部に架けられているためか、…

抽象彫刻発電所

ドイツアルプスの麓の街、ケンプテンにある2010年に竣工した水力発電所を見に行ってきた。地元の建築設計事務所のベッカー・アーキテクトの設計。たいへんありがたいことに、ケンプテンに住む友人の取り計らいで、施設のガイドツアーにも参加させていただく…