はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

形態

構造の遊び

朝に羽田を出発して北九州に入り、レンタカーでいわゆる近代化土木遺産をいくつかまわって佐世保まで行くという、わりと無茶苦茶な行程ではあったけど、ずっと見てみたかった弓張岳展望台になんとか日没直前に到着した。 これは1965(昭和40)年につくられた…

イケメン高架

新東名は険しい地形を無理矢理ぶち抜いて道路を通しているので、必然的にトンネルと高架橋が連続している。そもそものお値段はどちらにしてもとてもお高いので、いろんなところで徹底的にコスト縮減が図られた。その影で泣いていた人は数知れない(僕も少し…

ゆがんだ主塔

2006年に開催されたトリノ冬期オリンピックに際してつくられた歩道橋。鉄道とその車両基地を跨いで、選手村と地下鉄駅方面を結んでいる。縦にも横にも斜めに傾斜しているアーチ状の赤い主塔、吊っているんだかカウンターウェイトにしているんだかよくわから…

リアル集中線

室蘭港の埠頭に野晒しで積まれていた、様々な太さの鋼棒。みっちり具合、鉄の重量感、自由な配置、錆のテクスチャー、一点集中のパース感、もうたまらない。港湾にはこうした無名の作品がたくさんあるので楽しいね。

硬い造形

ベルギーのKortrijkという街にLaurent Neyが手がけたcollege橋を見に行ったとき、その隣に架かっている桁橋が気になったので近寄ってみた。直線的な造形はやりすぎなくらい硬質感がある。極端に裾広がりの橋脚は、河川の高水敷だったら成立しないフォルム。…

リピート

同じものが繰り返されるってことに大きな魅力を感じる。それは宗教音楽やテクノから受ける印象によく似ている。たとえば、繰り返される旋律、淡々とした音色、規則正しいリズム、単調な構成。こうした要素が、覚醒や恍惚や高揚といったいわゆるトランス状態…

ミラノの玄関

ミラノはファッションやデザインの街として名高い。でも、空の玄関口であるマルペンサ空港に架かる斜張橋は、びっくりするほど鈍くさい。いろいろと腐心している形跡はあるのだが、いかんせん構造フォルムが不格好なのだ。 最初にこの空港に降り立って街に向…

ヴェネツィアの赤いアーチ

ヴェネツィアのカナルグランデを跨ぐ4つめの橋は、2008年に架けられたばかり。鉄道と道路のそれぞれの玄関口であるサンタルチア駅とローマ広場を結ぶという極めて重要な位置にある。設計はご存じカラトラバ。 僕の中でカラトラバは空気が読めない、もしくは…

うずまき

バチカン博物館の出口には、とてもすてきな二重らせんのスロープがある。下に行くほど渦が小さくなるので、曲率も勾配も変化する。とても素敵でしびれたのだけど、転倒事故が多いのか転倒するピクトさんが描かれた黄色の三角板が異様にたくさん壁に貼られて…

ファシストの家

ジュゼッペ・テラーニというイタリアのモダニズム建築家が設計したカサ・デル・ファッショという建物が、スイスとの国境付近のコモにある。1932年にムッソリーニのファシスト党本部として建てられ、現在は国境警備隊が使っている。まあ権威を象徴するのが使…

トリックアーチ

ミラノから電車でおよそ1時間のコモの街を散策中、遠くの方にチラリと見えた山裾の鉄道高架橋に大きな違和感を抱いた。急いで近づいてみると、それは理解しがたい連続コンクリートアーチ橋だった。なんだこれ、アーチ部分におかしな段差が付いているぞ。左か…

オーバーパース

フランス東部の国境の街、ストラスブールの郊外にあるパークアンドライドのトラムターミナル。イラク出身の建築家ザハ・ハディドが設計したもの。絵心のない人が頑張ってつくったフォトモンタージュのように、画面左下の人と車のパースがおかしなことになっ…

非ダッチデザイン

アムステルダムの自転車道に架かる自碇式吊橋のnesciobrug。緩やかなカーブの線形や、断面形状が連続的に変化する鋼箱桁や、シンプルな各部のおさまりなどがすごく素直できれい。流麗で繊細で洗練された印象を受ける。つまり、オランダらしくない。ダッチデ…

真っ直ぐではない塔

バルセロナのモンジュイックの丘にあるカラトラバがデザインした通信塔。これが、想像以上にさわやかなかっこよさだった。 カタルーニャの突き抜けた青空のせいなのか、オリンピック会場のばかばかしいほどの空虚感とのマッチングに感激したせいなのか、前日…

ひねり技

ロッテルダム近郊の水路に架かる自転車と歩行者のための橋。とても現代のオランダらしさを感じる。経済的合理性や典型的な美とはまた少し違う方向、ジョークのように見せかけて本気でやるというアプローチ、失敗してもそれほど気にしない寛容さ。いやほんと…

ゲーテアヌム

「シュタイナー教育」というのが結構流行っているようで、時折噂を耳にする。ウィキペディアには「シュタイナー教育の目指すものは、宇宙にある諸事物の理念を、人間と結びつけて理解し、それによりミクロコスモスとしてのわたしを活き活きとした理念で満た…

細い脚

シュトゥットガルトから南西に約50km、ネッカー川がつくった谷を跨ぐアウトバーンの高架橋。この橋脚、不健康なスーパーモデルのように痩せ細っているじゃないか。やけにかっこよすぎるけど、大丈夫なのか。 なお、桁は現在絶賛塗り替え中。桁は極めて鮮やか…

念願のサーベイ

セーヌ川の河口を跨ぐノルマンディー橋が供用したのは、1995年のこと。個人的な話で恐縮だが、この年は僕がデザインの修士を修了し、土木の設計会社に就職した年でもあるので、この橋のことがとても印象に残っており、いつか現地に見に行ってみたいとずっと…

グレイシュの橋

先日、オランダ南端のマーストリヒトに行ったときに、きれいなアーチ橋を見かけた。構成要素の基本形態とそれらのおさまりがとてもシンプルにまとまっていて、すっきり爽快さわやか系歩道橋といった印象を受けた。 どなたの設計なのかなと気になって調べてみ…

ホワイトアスパラ

アイントホーフェンからアムステルダムへの高速道路を走行しているとき、ユトレヒト付近でちらちら見えていた妙に存在感のある斜張橋が気になったので、あらためて見に行ってみた。 いやあすごいね、スチールでもここまで細やかな造形ができるのかと感心した…

格子の桁

アヴィニヨンのローヌ川に架かるラティストラスの鉄道橋。おそらく鉄の扱いにまだ手慣れていない時代のものなんだろうね、重厚感とか存在感がすごいんだけど、同じ部材が等間隔で繰り返されるミニマルな格子模様がなんとも心地よい。

セクシーな脚

ミヨー橋は橋長が2,460mもあり、道路や鉄道や河川など様々な交差物件を跨いでいるにもかかわらず、そのスパン割は204m+6@342m+204mと極めて整っている。平面線形はR=20,000mの緩やかなカーブを描いており、縦断線形は約3%の一定勾配で北側に下っている。この…

車が通れる彫刻

カラトラバの橋を見るときは、ケチくさい経済的合理性を考えてはいけないようだね。たまたま橋の機能も有している彫刻作品というように捉えた方が、精神衛生上好ましいもの。実際にはっとするような研ぎ澄まされた美しさを感じるし。

あやとり的輻輳感

アムステルダム中央駅の近くにある音楽ホールMuziekgebouw aan 't IJのアプローチには、面白い橋が架かっている。いくつものケーブルがあやとりのように輻輳している上に、支柱や定着部の形状は連続的に変化していて、独特のリズム感を生み出している。細か…

過激な自由

アムステルダム中央駅から東へバスに揺られて約15分、十数年前に行われた湾岸地区の再開発を見に行ってきた。デザインが適度にコントロールされた長屋群による街並みも面白かったのだが、圧巻はボルネオ埠頭とスポーレンブルグ埠頭を結ぶ奇妙な赤い歩道橋。…

デザインのスタンス

新進気鋭の構造設計家ローラン・ネイを中心とするチームが手がけた、ブリュッセル郊外に2001年に架けられたTervuren歩道橋。道路を跨ぐ高い位置の遊歩道橋と、トラムの停車場がある下の歩道のための横断歩道橋の2つの役割を持っている。 複雑な動線を持つに…

権威主義的閘門

先日のドライブで偶然出会った閘門、Lanaye Lock。マーストリヒトの南、ベルギーに入ってすぐに位置しており、かなり水位差がある上流のLanaye運河と下流のAlbert運河を結びつけている。威圧感さえ感じさせる堂々たるデザインの上屋がなんともかっこいいね。

大人っぽくないデザイン

欧州の橋のデザインはレベルが高いことは間違いないと思うけど、ときには残念なものもあるよ。先日紹介した地味ながらも素敵な大人のPC斜張橋のひとつ下流に架かる橋もそう。そもそも吊橋を選定した必然性がわからないし、側径間が異様に短いプロポーション…

大人コンクリート

マーストリヒトから南下してベルギーに入ってすぐのところにあるLanaye橋。コンクリートの斜張橋というとごつくて重たいというイメージがあるけど、この橋はすごく軽やか。スリムなプロポーションを引き立てる絶妙なテーパーやケーブルの定着部などのディテ…

最近のアーチの形

リエージュのこの駅の裏手にあるGuillemins橋。アーチのフォルムは駅舎のそれと同様、2つの直線をアールで結んだものになっている。いかにもカラトラバっぽいね。つい最近まできれいな形ではないと思っていたのだけど、実物を見てからは思い直すようになっ…