はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

構造

干潟の上の橋

吉野川の河口付近には、多様な生物相を育み水質浄化にも寄与する干潟がある。その上空を跨ぐように、市内の渋滞緩和を主目的とする「阿波しらさぎ大橋」が2012年に架けられた。その立地特性から干潟の環境に配慮した構造物とすることが求められ、斜張橋とケ…

山奥の名橋

世界的に高い評価を得ている橋が、徳島県の山奥にある。2004年に完成した「青雲橋」という曲弦トラス橋の一種で、橋長97m、幅員5m、水面からの高さ約40mの車道橋である。fib(国際構造コンクリート連合)が2006年の最優秀賞に選定したことを記念するプレート…

絶妙なリング

先日札幌に出張に行った際、今年の夏に開通したばかりの「アクティブリンク」に立ち寄ってきた。病院、ホテル、分譲マンションなどのビル群の谷に位置しており、それらの2階部分を楕円のような形状で連結する空中歩廊だ。場所はかつて僕が働いていた新札幌…

アーチを支えるアーチ

スペインのログローニョでたまたま通りがかって見に行ったプラクセデス・マテオ・サガスタ橋(Puente de Práxedes Mateo Sagasta)は、とてもワクワクした。なにしろ、力の流れが魅力的な造形で可視化されているのだから。このような体験は、そう簡単に得ら…

アーチで補剛

2014年に竣工した広島の太田川大橋は、僕の中にある単弦アーチ橋のスタンダードなイメージからかっこいい方向にシフトしているので、ずっと気になっていた。それは、わずかに低く見えるアーチライズ、透過性があって軽快な印象のアーチリブ、下部工と一体に…

時代をつくった橋

世界中の国がその往来を閉ざしているいま、ほんの3ヶ月前にイギリスに行ったことが、はるか昔の夢のように思えてくる。でも確かにブルネルの偉業を見てきたんだよな。 そのブルネルを含むイギリスの土木技術者は基本的に経験主義的な解き方をしており、その…

感動できる構造

お正月のバスク紀行より、一見すると地味なんだけど高い感動が得られるエスカルドゥナ橋を。カルロス・フェルナンデス・カサド事務所の設計で1999年に竣工したこの橋は、曲線桁の上部にがっちりした大きなトラスが斜めに配置され、さらに幅員が広い歩道上部…

ハーフ構造風

萩から川を上るようにドライブしていると、木々の隙間からチラリと赤い鋼橋が見えて、うわっと色めき立った。なんだこれ?トラスをアーチで補剛しているのか?まさかあのランガートラス橋というやつか??などと、ざわつきながら近づいてみたのだが、トラス…

ガウディの教会

アントニ・ガウディの最高傑作とも言われる、バルセロナの郊外サンタ・クローマ・ダ・サルバリョーにあるコロニア・グエル教会。玄武岩の柱状節理をそのまま使った斜めの柱や、レンガのアーチや天井のリブ、有機的な形状からなるステンドグラスや椅子など、…

トロハの水路橋

スペインの偉大な構造エンジニアであるエドゥアルド・トロハ(Eduardo Torroja, 1899-1961)によるアリオスの水路橋(Acueducto de Alloz, 1939)は、たいへん感動的な構造物だった。80年前につくられた軽快でシャープなコンクリート構造物は、構造面や経済…

ちがい探し

先週、多摩川に架かる「是政橋」を見てきたのだが、これほど刺激的で貴重な楽しみ方を提示してくれる橋も珍しく、ワクワクしているのかムズムズしているのか自分でもよくわからない興奮を伴った楽しい体験をすることができた。それは上下線の「ちがい探し」…

崩落したジェノバの橋

2018年8月14日、イタリアのジェノバで「ポルチェヴェラ高架橋(Polcevera Viaduct)」が崩落した。上の写真にある全てのケーブルと桁と塔が一瞬にして崩れ落ち、通行車両に乗っていた方や桁下の住民などが43名も死亡するという、とても痛ましい事故だ。もち…

同い年のイケメン

東京の水源地である奥多摩湖(小河内貯水池)に、とてもクールでメカニカルな橋が架かっている。その名は三頭橋(みとうばし)といい、なんと1969年生まれだという。いやあこんなスタイリッシュで現代的なイケメンが東京の最奥地にいただなんて、不覚にも知…

特殊なアウトプット

長崎の出島表門橋は、とても微妙なバランスで成り立っている。 出島側は土地自体がほぼ国指定史跡の遺構なので、橋台を置くことができない。このため桁は、浮かび上がらんばかりに優しくタッチするだけになるよう、江戸町側の橋台をカウンターウェイトとする…

背の高いトラス

大阪ドーム(京セラドーム大阪)の南側にあるJR大阪環状線の岩崎運河橋梁。先日の大阪訪問時にたまたま見かけて、やたらと背の高いプロポーションにのけぞった。隣に架かる道路橋の4径間桁橋の橋脚がそのシルエットに重なって見えたためか、その奇妙さがより…

浮きテント

ケルンで見たフライ・オットーによるダンス場の膜屋根は、たいへん感動的だった。絶妙な緊張感を伴って宙に浮かぶテントの姿は、まるで魔法を見ているようだった。60年前の1957年につくられたというから、さらに驚く。特別に耐久性が高いわけではなく、時々…

ただならぬ体育館

先日の佐賀訪問時には、数時間の時間を確保してまち歩きをした。街の中を縦横に走るクリークを中心に見て回っていると、遠くにギザギザした不穏なシルエットが見えた。直感的にこれはヤバいものだとググッと心を掴まれて早足で近づいていくと、折板構造の壁…

構造の理解の仕方

多少なりとも橋梁設計に触れていた身からすると、映画や漫画の世界に登場する橋にびっくりすることがある。例えば、メインケーブルが切断されているのに全体が崩落しない吊橋、中央の橋脚によってやじろべえのようにバランスを保っているアーチ橋、橋脚なし…

世界的な歩道橋

数年前に九州に行った際の写真をほじくり返す機会があったので、その最中に大事な橋を再発見した。川口衞が設計した、別府の南立石公園の脇に架かる「イナコスの橋」だ。その構造形式は「サスペンアーチ式不完全トラス構造」とされているが、正直なところ僕…

悪魔の橋

昔から人は自分が理解できないものを、神や悪魔の仕業として位置付けようとする。どうにもならない難所に超絶テクニックを用いて架けられたことで、「悪魔の橋」と呼ばれる橋梁は世界中にあるだろう。有名どころでは、スイスのゴッタルド峠の近くに架かる橋…

薄い板

スイスのフライエンバッハという街の南にある、高速道路の上空に架けられたビルヒェルヴァイト(Bircherweid)歩道橋。高低差がある場所を驚異的に薄い板だけの構造物は、なんと1965年につくられた世界初の吊床版歩道橋だという。少々道に迷いながらたどり着…

オリンピックの話

僕もオリンピックを見に来た。でもリオデジャネイロではなく、1972年開催のミュンヘンオリンピックの会場に。軽量構造のスペシャリストであるフライ・オットーの代表作である膜構造の屋根を見るために。 昨年の春頃、ネット上でオットーの訃報を目にした。プ…

技術の重ね方

スイスのViamala渓谷に架かる吊床版橋のPunt da Suransuns。それぞれの部材が、恐ろしいまでに薄く、細く、単純。構造家のユルグ・コンツェットが手がけた橋梁は、ギョッとするほど極端に研ぎ澄まされたミニマル・デザインであり、その意味を理解して受け止…

がんばれ橋脚

先日、ものすごく無理しつつも必至に桁を支えている橋脚を、新宿で見た。これほど見た目に限界付近で耐えていることが理解できる橋脚は珍しいので、どうしたって応援したくなるよねえ。そんなことを一緒に歩いていた方々に興奮しながら伝えたのだが、あまり…

インテグレーション

先週はローラン・ネイの話を直接伺う機会がいくつもあった。その中で彼は、随所に「インテグレーション」という言葉をちりばめていた。前回に引き続いて、再びアムステルダムのフルハトハーフェン橋(Vluchthavenbrug、2012)を眺めることで、彼の「インテグ…

近代石橋

スイスのヴァルス村の中央に架かるヴァルサーライン橋(Valserrheinbrückeか?)も、先日のグレンナー橋と同じユルグ・コンツェットが設計した橋であり、2010年に供用された。 見るからにユニークな橋だ。両サイドに縦方向に積層された石材が重要な構造部材…

近代木橋

構造形式自体は伝統的なものだが、現代的にクールにアレンジされたスイスの木製方杖ラーメン橋。例によって正式名称がよくわからない(Glennerbrückeか?)ので、とりあえずここではグレンナー橋としておこう。ユルグ・コンツェットの設計で、2002年につくら…

橋の写真

ひとつ前の記事で、オランダのナイメーヘンに架かる橋「De Oversteek」の写真を取り上げた。柴田敏雄氏の写真展に感化されて、自分の写真もそれっぽくならないかあと思い、構造的な特徴を持つ部分をクローズアップして構図のバランスを再検討してみたり、ド…

元世界チャンピオン

「世界一の橋」ってのは、いろいろな切り口があってわかりにくい。「高さ」に着目してみても、構造物の最高点(Wikipedia:List of tallest bridges in the world)と路面の位置(Wikipedia:List of highest bridges in the world)では、出てくる橋がまるで…

格子のダム

自分が一番好きなダムってなんだろうか。まあ一番なんて決められないよね、みんなそれぞれ好きだもの。とは言え、僕の場合は若干の傾向はある。膨大な水圧に対して圧倒的なボリュームで対抗するものよりも、使用する材料を最小化しつつ構造で対抗するものが…