はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

河川

佐賀の水の礎

佐賀平野は水に恵まれているわけではない。むしろ「照れば渇水、降れば洪水」と呼ばれてきた厳しい状況だ。広大な農地を潤し続ける水源を持つほどの大きな山はないし、干満差が大きい有明海は水害の被害をもたらすこともある。そんな環境の中で、人々は創意…

江戸時代の水システム

唐津湾に注ぎ込む松浦川の中流域に広がる水田地帯に、「桃の川水路」という地味ながらも素晴らしい利水施設がある。佐賀では知らない人がほとんどいないが、佐賀以外ではほとんど知られていない成富兵庫重安(なりどみひょうごしげやす)の手により、江戸時…

過剰水門

1983(昭和58)年に完成した六角川河口堰を見に行くにあたり、台風時の高潮被害から地域を守るための「防潮水門」であることは心得ていた。ところが現地で実物を見てみると、想像をはるかに超えた過剰な雰囲気が施設全体に漂っていてのけぞった。堰幅226.2m…

眼鏡橋両岸暗渠

長崎は見どころがありすぎて困る。数日間の滞在では訪問先を絞り込むことが困難なレベルだ。このため、これまで少し腰が引けていたのだが、このたびチャンスが訪れて一泊することが実現した。その初日、ついでに眼鏡橋くらいは見ておかねばねえと思って、目…

段差がある水辺

すでに埋め立てられた立売堀が木津川に接続していた場所にある「トコトコダンダン」は、直線的でクールな造形なので、少し取っつきにくい印象があるかもしれない。でも実際に空間を体験すると、とても心地よい。その源泉には、視点の高さの変化による豊かな…

水を制する堤

筑後川の下流に「デ・レーケ導流堤」と呼ばれている港湾施設がある。筑後川の幅を狭めることで流速を早め、土砂が堆積しにくい状況をつくり出し、航路として必要な水深を確保するというもの。干満の差が最大で6mもある有明海ならではの工夫だね。 オランダか…

清正への挑戦

熊本地震の直前に放送されたブラタモリに登場した「鼻ぐり井手」を見に行った。1608(慶長13)年、新田開発のために加藤清正がつくったとされる農業用水路の施設であり、穴の空いたフライングバットレスのような壁が連続しているものだ。水路を流れる水に渦…

琵琶湖の水

日本の古都・京都には、1890(明治23)年につくられた琵琶湖の水を市内に運ぶための壮大な規模の水路があり、今も現役の施設として市民生活の中に溶け込んでいる。明治維新によって首都機能が東京に移ったことで、当時の京都は著しく衰退しはじめていた。そ…

リアルな山水画

先週末は旭川を訪問した。11月上旬なのに、ひょっとすると根雪になるんじゃないかと思うほどの荒天に見舞われた。訪問者の身勝手な思いだけど、久々に真冬の北海道を疑似体験できて、懐かしさとうれしさがこみ上げてきた。 土曜日の午前中に用務が終わり、夕…

立山のドボクを見に行こう

2016年11月19日(土)~20日(日)1泊2日で、富山県立山町を貫流する常願寺川のドボクを見に行きませんか?監修という立場で僕も企画に参加しているツアーが実施されますよ。 旅の発見:【モニターツアー】激流をコントロールせよ!「富山県立山町・土木イン…

川の中の駅

夏にチューリッヒを訪問したとき、坂茂氏が設計した木造7階建てオフィスビル「タメディア新本社」を見に行った。しかし、目の前を流れる河川の中にある構築物に目を奪われてしまい、木造ビルどころではなくなってしまった。 これはなんと、河川の地下を通る…

ドボクの集積ポイント

フォルトキルヒの繊細なトラス歩道橋から上流を見ると、なにやら新しそうな屋根付き木橋が見えたので、近寄ってみてみることにした。その木橋自体も様々な工夫が取り入れられていて面白かったのだが、さらに上流に目をやると、なにやら堰堤らしきものが見え…

滝になった川

先週末、常願寺川の上流から河口までを2日間かけて丁寧にたどる旅を実践してきた。ここ数年で何度も訪れているエリアだけど、はじめての体験がいくつか実現できた。まず、常願寺川の源流の一つである称名川が弥陀ヶ原台地を一気に350mも流れ落ちる「称名滝」…

都市内サーフィン

海岸から500kmほど離れた内陸都市のミュンヘンにあるエングリッシャーガルテン(イギリス庭園)の一角に、なぜかサーファーが生息しているという情報を、何年か前にテレビか何かで得ていた。アルプス訪問の際にそのことを思い出し、本当にそんなバカバカしい…

女王陛下のロックゲート

海外の土木構造物の情報をどうやって見つけるのかという質問を時々いただく。ネット上でしつこく探すという回答になるわけだが、それなりにコツというかカンが必要になる。ざっくりとは『ヨーロッパのドボクを見に行こう』の「第7章|ドボク旅行のテクニッ…

メジャードボク

いまさら感が否めないんだけど、はじめて「首都圏外郭放水路」を見学してきた。最近の土木構造物の中でも、スーパーメジャー級なのに。しかも、自分から仕掛けたわけでなく、別の企画に便乗するというやや消極的なスタンスで。 これまでいろんな方のかっこい…

背が低い水門

昨年の秋口に島根を駆け足で巡ったとき、宍道湖畔の「岸公園」と、菊竹清訓が手がけた「島根県立美術館」もチラ見しておこうと思い立った。駐車場にレンタカーを止めて、とりあえず周辺をぐるりと歩き始めると、2門のライジングセクタゲートを備えたかっこ…

未来的バイザーゲート

先月中旬にどなたも誘うことなく催行した『オランダのドボクを見に行こう』ツアーでは、いくつか見ておかなければならない物件があったのだけど、その中でも最も訪問を切望していたものが二連のバイザーゲートを有する「Stuwcomplex Hagestein」だ。日本名は…

親水性

出版記念トークイベントのために、大量の写真を仕込んでいる。その作業の中で、オランダの親水性を示す写真をいくつかピックアップした。ユトレヒトの運河の写真をあらためて見ても、その寛容さには目を疑う。日本ならばここまで水際に接近させないばかりか…

ゆるキャラコーデ

先日、ベルギーの運河エレベーター「ストレピ・テュー・ボート・リフト」の写真を真剣に眺めていた。これは、船を浮かべた巨大なバスタブを昇降させて、73mの水位差を解消してしまうという、びっくり水運インフラ施設だ。最上部にある機械室は、ガラス越しに…

行きにくい水門

ロッテルダムの南西にあるスパイケニッセという街の近くに、なんとスパンが98mもある「ハーテル防潮水門」がある。例の「デルタワークス」関連施設(暮らしを守るということ)だ。ローラーゲートとしてはたぶん世界最大なんじゃないかね。ちゃんと調べてない…

川の流れ

ハフィントンポストに「なぜ川は、曲がって流れているの?アニメで解説【動画】」という興味深い記事があった。川が蛇行するメカニズムをわかりやすく解説している動画の紹介記事だ。 この動画を見て、今年の正月にシベリア上空で見た川を思い出した。ぐねぐ…

危険レベル表示

鹿児島県さつま町を貫流する川内川に架かる宮都大橋。川内川激特事業に関連して、2年前に架け替えられたばかりという。旧橋は6径間のコンクリート橋だったが、大胆に3径間の鈑桁橋になった。 端部の桁高が薄くてびっくりするし、ほぼ黒に見える桁の色にもび…

神の仕事

2006(平成18)年7月、主に鹿児島県の北部を流れる川内川流域は記録的な豪雨に見舞われた。その規模はすさまじく、中流にある鶴田ダムが「計画規模を越える洪水時の操作」に移行せざるを得なかった、つまり、ダム湖がすっかりおなかがいっぱいになってしまい…

狭小国家の水資源

F1グランプリが開催されたシンガポールの観光スポット「マリーナ・ベイ」の一帯からは、広大な水面にそぐわない違和感を強く覚えた。周辺をさらっと歩いた訪問初日には、マリーナ・ベイ・サンズをはじめとするトンデモ建造物たちがそう感じさせているのだ…

暴れ川から水を引く

またしても富山を訪問する機会があったので、常願寺川から農業用水を取水するための施設である横江頭首工に行ってみた。これが、なかなかすてきだった。 この施設を整備したそもそもの発端は、あのデ・レーケがこのスーパー急流河川の治水を考えた際に、「こ…

砂防の聖地

先月の中頃に訪問した立山カルデラのハイライトのひとつは、文句なしにカルデラ出口の狭隘な谷の要である「白岩堰堤」だ。本気で世界遺産にすべき人類の叡智の結晶だよ。すでに重要文化財には指定されているけどね。もちろん、観光地化するわけにはいかない…

自然に取り込まれる

立山カルデラの奥の方にある最新の砂防堰堤の少し手前に、1938(昭和13)年につくられたという老堰堤があった。「泥谷」という沢を跨ぐ橋梁から、堤体の下流面を見ることができた。越流部に見えるコンクリートのテクスチャーからして、尋常ではない風格が漂…

ボートに泊まる

アムステルダムの運河にはたくさんの「家の船」が係留されている。それらにはちゃんと住所もあるし、水道や電気などのライフラインも通っている。以前から、これらの「ハウスボート」を体験してみたかった。そして、このお正月にようやく実現した。 水面が近…

上海近郊のベニス

先日ヴェネチアの写真を眺めていたときに、そういえば7年ほど前に上海を訪問した際に、1時間半ほど離れた「周荘」という水路の街で船に乗ったことを思いだした。 その当時の周荘は、急激に観光地化している最中だったようで、そこに住む人々の地味な生活と、…