はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

海岸

浸食の供養

今年の大型連休における人出の傾向は「安近短」と言われているが、僕もその通りの行動を取り、土日に車で銚子を訪問した。あいにく日曜日に雨に降られたので、土曜日のうちに見たいものを詰め込んだ行程にした。 銚子旅行の主目的は、屏風ヶ浦の鑑賞。下総台…

精緻な隊列

矩形の脚が6方向に突き出た消波ブロックによる離岸堤。見事にビシッとしている。海上で施工するのだろうけど、よくぞこんなにも緻密に積層したものだと感心する。荒天時にはものすごく大きな波圧が離岸堤に加わり、せっかくの配列が乱れてしまうような気が…

海岸のクローン兵

日本は海に囲まれた島国である。しかも、結構ひょろ長い。このため、国土の外周全体が津波、高潮、波浪といったジオスケールの自然現象に晒され、海岸線の浸食、砂浜の消失、交通の分断、家屋の流失、人命の喪失などの被害が古来より延々と繰り返されている…

鎮魂の軸線

10月に気仙沼へ取材に行った際、どうしても行きたかった陸前高田の高田松原津波復興祈念公園にも足を伸ばした。最初の訪問時は高台造成のためのベルトコンベアが張り巡らされており、前回は施設のオープン直前だったので、ようやく落ち着いた状態を体験しに…

内湾の防潮堤

三陸海岸の沿岸漁業から世界の海に出る遠洋漁業を網羅するレンジの広い漁業基地として、さらには水産加工業や造船業でも栄えてきた気仙沼。その発展の起点は、気仙沼湾のさらに奥にある入り江を取り巻く内湾地区と言われている。この場所が海と人を結びつけ…

果てなき消耗戦

記憶の中にぼんやりと残っていた写真を、ようやく探し当てることができた。車で長野県小谷村に行った際に、日本海に抜けて親不知海岸まで足を伸ばしたことをすっかり失念していた。 北アルプス山脈の北端が日本海に飲み込まれている場所は、知らない間に親子…

整っていない大階段

福島県相馬市の伝承鎮魂祈念館に向かう最中、防潮堤に張り付いている大きな階段が目に止まった。その存在感と同時に強い違和感を抱きつつ、ザワザワしながら通り過ぎた。 この階段のすぐ先にある祈念館と慰霊碑を訪問し、震災前と震災直後の風景写真や映像を…

オーガニック人工磯

下北半島の木野部(きのっぷ)海岸。海に囲まれた島国である日本の海岸線によくある風光明媚な磯と砂浜の風景だなあと思って、うっかりスルーしてしまいそうになる。ところが、写真の中央部にある磯は、かつてこの地域で伝統的に行われていた「築磯」を近自…

海底観察タワー

玄界灘に面する波戸岬の「唐津市玄海海中展望塔」に立ち寄ってみた。波戸岬は「日本本土最北西端」なんだそうな。そんなこと言われても全くピンとこないが、高らかに一番を名乗る姿勢は尊重したいね。 あたかも水族館のように海底約7mの様子を観察する体験は…

青い海の人工島

あまりにも寒い日が続いているので、昨夏に行った沖縄の写真を眺めている。すっかり忘れていたけど、那覇空港の沖合の青い海で人工島の埋め立て工事が進められている様子を撮っていた。 これは新滑走路の建設工事なんだろうなあ、たしかに国際線や離島便など…

断面に見える斜面

勝浦港の防波堤から見た漁協施設と集落、その背後にある崖地。2つの尾根の間に住宅があることも、チラリと確認できる。まるでポリゴンフレームのような法枠工の急斜面は、山を垂直にザクッとカットした断面のようにも見え、なにかを説明するためのジオラマ模…

リアス海岸の谷

先週は外房の勝浦を、2泊3日でたっぷり堪能してきた。とても印象深かったのは、なんと言っても海側には開いているけれど、陸側は閉ざされているリアス(式)海岸の地形と、それに由来する生活文化。あ、僕を含む大人のほとんどは「リアス式海岸」と教わって…

海中基地

先日訪問した勝浦の「海中展望塔」のことを考えるたびに、映画「007 私を愛したスパイ」を思い起こす。悪役の海中基地「アトランティス」が脳裏をかすめるのだ。この展望台が海中からざばーっと現れてくれると最高だよなあ。 確証はないけれど、「007 私を愛…

いけす遺跡

昨日は10人乗りのレンタカーで津田沼の職場を朝9時に出て、房総半島の太平洋側の勝浦市を訪問し、夜9時に職場に戻った。そのうち往復の移動時間はたっぷり4時間。地元の方々は首都圏から遠いと自嘲的に語ることが多いが、時間距離があるからこそのメリッ…

水との距離

数日前にある方からオランダの水との関わりについての参考図書を求められ、自室にある関連書籍をざっくりチェックし直した。久しぶりに『Dutch Dikes』などのすてきな書籍に触れて、すっかりオランダに行きたい気持ちが高まってきてしまった。なんだろうこの…

海岸の多層防御

昨日は21_21デザインサイトで行われている「土木展」のイベントとして、大山顕さんと「土木を愛する人たち」というタイトルのトークセッションを行った。大山さんのご提案により、展示のテーマにも掲げている「つなぐ、ながす、ほる、ためる」に含まれていな…

ジュゴンの拘束具

消波ブロックを「テトラポッド」という呼び名で認識している人は多いだろう。先駆的存在であるとともに、特徴的かつ均整の取れた姿のためか、すっかり一般名称として浸透しているよねえ。でも、これはひとつの商品名だ。同様の機能を有する製品は多数あり、…

コンクリートの柔軟性

コンクリートは型枠次第でどんな形にもなる。その型枠が何度も転用できる鋼製だったりすれば、同じ形状のものを大量に生み出すことができる。そんなことを頭の片隅においておくと、海岸を守る消波ブロックの形態バリエーションですら楽しめるようになるよ。…

水門探訪

今年の夏、オランダのデルタワークス関連の構造物で、個人的に最後の大物であるハーリングフリート水門(Haringvlietdam)をようやく目撃した。5年ほど前に訪問したときには冬期間だったためか、施設が閉鎖されていて断念したんだよね。今年訪問したとき、そ…

復興ドボク

週末に陸前高田で開催された「復興ドボク見学会」に参加し、はじめて東日本大震災の被災地を視察した。いまさらなにをとあきれる方も多いと思うが、僕としてはようやく気持ちが整ってきたタイミングで、ちょうどいいチャンスをいただけたと思っている。震災…

テトラ愛

富山地方鉄道本線の中滑川(なかなめりかわ)駅前には衝撃的なオブジェが設置されている。上端には水が噴き出す仕掛けが設置され、全体が白く塗られ、脚部にはそれぞれホタルイカらしきファンシーなイラストが施されたテトラポッドが鎮座しているのだ。 この…

海岸を守る円弧

最近知り合った富山に住む友人に勧められて、生地(いくじ)という街を訪問した。彼は「まず、海に向かいなさい」とまるでお告げのように言っていた。その通りに延々と下新川海岸に向かって歩いた結果、びっくり構造物を拝むことになった。お告げは正しかっ…

残されたブロック

オランダが誇る長大水門、東スヘルデ防潮水門に隣接した人工島には、デルタパーク・ネールチェヤンスという展示施設兼レジャー施設がある。そこの水面に、謎めいたコンクリートの造形作品がぽつんとたたずんでいる。これはなんと、水門のピアである。ひとつ…

ドデカブロック

ポートタワーの足下にずらりと並んでいたあの直立式消波ブロック「ワーロック」と同じものを、少しだけ離れた場所で直近から眺めることができた。なかなかボリューム感、そして無骨な威圧感。素敵だな。もう少しでゲーテアヌムのような力強すぎる造形に近づ…

整列コンクリート

千葉ポートタワーにはイベントやら取材やらで何度も行ったことがあるけれど、プライベートでお金を払って登ったのは、もしかすると今回がはじめてかもしれないな。先週末訪れたとき、展望フロアからの眺めには大興奮した。間違いなく入館料410円をはるかに上…

知覚の反転

最近、ガチガチに硬いはずのコンクリート製の消波ブロックが柔らかいものだと感じてしまうようになり、たいへん困っている。我が家のリビングに、大小7つの「テトぐるみ」が転がっているせいに違いない。あの形に対する自分の中のプロトタイプが、知らぬ間に…

治水テーマパーク

オランダに来る機会があれば、ぜひ訪れていただきたい場所がある。それは、東スヘルデ防潮水門に併設されている、水にまつわるテーマパークのDeltapark Neeltje Jans。 公式ホームページをご覧になっていただくと感じられると思うが、バブル景気の頃に日本で…

暮らしを守るということ

日本から友人が来てくれたので、オランダそのものを体験しようと東スヘルデ防潮水門を見に行ってきた。スパン45mの巨大水門がなんと62基も並ぶというとんでもないスケールの構造物。以前マエスラント防潮水門でも見た治水プロジェクト「デルタワークス」の一…

波の力を受ける点

マエスラント防潮水門は、幅360mの運河の両側に配置された円弧状のセクターゲートが閉じられることにより機能する。200mはあろうかというゲートにはトラスで組まれた扇状のフレームがついており、その長さはおよそ250mにも及ぶ。ゲートは閉じられた後に沈め…

ダッチ土木の執念

ご存じの通りオランダは極端に土地が低いため、水の災害が頻繁に起こりやすい。かつて隣国と戦争状態にあったときには、その特性を逆手にとって、わざと川を氾濫させて敵軍を水攻めにするという防衛ラインを構築したほどだ。オランダの国土の管理は地域全体…