はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

産業

小麦のリレー

このところ千葉港を訪れる機会がたびたびあり、ばら積み船→埠頭→サイロ→製粉工場→製パン工場→店舗→食卓という小麦の流れを示して、食品コンビナートの説明をしている。これがなかなかわかりやすいようで、都市のバックヤードとしての役割を深く納得していた…

可視化された物流

インド洋と地中海を結ぶスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁した事故は、発生から6日後にようやく航行再開に至った。懸命に続けられた離礁作業はもちろん、喜望峰ルートに舵を切った場合のコストなどのニュースをドキドキしながら見守っていた。船舶の航行…

大地の穴

人類は穴を掘り続けてきた。断熱性や保温性のある住処として、生活で出た廃棄物を埋める場所として、死者を弔い大地に還す場所として。まだ科学と信仰が一体だった頃、莫大な利益や強力な軍事力につながる錬金術に魅せられ、採掘の技術や規模は拡大していっ…

後から履いた網タイツ

伊豆の国市にある韮沢反射炉に行ってきた。沼津港にほど近い山中に、江戸幕府によって1857(安政4)年につくられた、鋳物鉄を溶かして大砲などを生産するための極秘軍事施設だ。7月の終わりにたまたま萩反射炉を見てきたので、1ヶ月程度の間に国内に現存する…

濃縮された近代産業史

念願かなってJXTGグループの展示施設である「日鉱記念館」を訪問することができた。結論から言うと、なんでもっと早く来なかったのかと猛省するほどの、素晴らしい場所だった。どんな要素が素晴らしいのかを断言するのは難しい。なぜならば、多方面に及ぶ質…

萩のツインタワー

山口県に行く機会があり、これまで行ったことがなかった萩にも立ち寄ってきた。とは言え、近代建築を少し見ただけで、有名な城下町には全く立ち寄ることができずに終わってしまった。その代わりにと言ってはなんだけど、ほぼ予備知識が無い状態にもかかわら…

山の中の塩

お正月にスペインの山中で購入した、とても美味しい「塩」がそろそろ切れそうで困っている。地中の岩塩が溶け込んだ泉からつくられたミネラルたっぷりの塩を、思っていた以上に消費しているのだ。日本での購入も可能なようだけど、ずいぶん高くつくので二の…

失った宝物

10年前の今日は、解体へまっしぐらだった蘇我のJFEスチール第5高炉を撮っていた。懐かしいなあ。もう、すっかり跡形もなくなってしまったね。 当時、これを残したいという声は散発的に上がっていたものの、実現にはほど遠い空気だったことを憶えている。今だ…

転換のシンボル

あけましておめでとうございます。本年も本ブログを生暖かく見守ってくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。僕は新年早々、休暇をフル利用して海外逃亡しており、スペイン北部のバスク地方とリオハ地方を巡っている最中です。まあ自慢なわけですが…

入口としての工場夜景

前の金曜日に「第9回工場夜景サミット in 千葉・市原」が開催された。千葉市や市原市の方々を始めとする、多くの関係者によってつくり込まれたイベントだった。サミット後には2つの特別バスツアーが地域の企業の協力のもとで行われたのだが、ありがたいこと…

向き合う姿勢

複雑なものや巨大なものは、一度だけではその見どころがわからないことが多い。直感的にすごいと感じても、圧倒されっぱなしになってしまい、下手をすると鑑賞する姿勢を放棄してしまいかねない。対象を自分の中に取り込むための思考がついていかない対象こ…

ドナドナ城

上海訪問の大きな目的のひとつは、コンクリートのただならぬ重厚感を漂わせながら、オシャレな店舗やクリエイティブ関連のオフィスなどが入っている1933老場坊という施設を尋ねることだった。ここは何と、租界時代にイギリス人建築家によってつくられた、当…

ステキ倉庫

倉庫の壁面って、時間が経つにつれてじわじわくる。立体駐車場がもたらしてくれるモヤモヤに近い感覚。全体的にヒューマンスケールからはずれているのに、ちょっとした隙に親しみが表れるツンデレなところとか、たいへんステキだよねえ。間接的に「人の都合…

工場鑑賞欲

昨晩というか今朝、久しぶりに石油化学工場の写真を仕事で使うためにピックアップした。ところが、アルバムを遡ってみてもなかなか出てこない。ようやくたどり着いたのが、2012年の12月。北九州から広島まで、友人たちと楽しく車で移動したときのもの。もし…

おとしぶた

本日、札幌を出発して羽田に着陸する飛行機は、D滑走路に降り立った。その前に、僕が座っていた機体の左側に、京葉コンビナートの眺めが広がっていた。この埋立地は近づいて眺められるポイントがとても少ないので、ちょっと興奮してしまった。 原油タンクの…

巨大な箱

横浜の運河沿いの倉庫の壁面には、窓が一切なく、換気口がたくさん設けられている。その眺めはヒューマンスケールを確実に逸脱しており、そこが魅力のひとつと言えなくもない。 先週、不幸にも三芳で発生してしまった大規模倉庫火災は、鎮火に6日もかかった…

超巨大モノリス

チューリッヒでは様々な場所からやたらでかいコンクリートの箱がチラチラ見えて、なんとなく気になった。古い鉄道高架橋の桁下空間利用事例を見に行ったら、たまたまこれが通りの奥にチラリと見えたので、おそるおそる近づいてみた。 窓がないのでオフィスビ…

世界遺産のお手入れ

地域を代表する産業遺産の保存活用は基本的に大賛成なので、先人たちの努力によって維持されてきた富岡製糸場には大きな興味がある。2007年に一度訪問した際、社会的背景なども含めてなんとなく理解したので、2014年に世界遺産登録されたことは、素直にうれ…

扇形の市場

1935(昭和10)年に開設された築地市場の建屋は、やんわりとしたカーブによる扇型が特徴だ。かつて最外周部分に敷かれていた鉄道によって決まったレイアウトと形状。建設当時は船と鉄道による輸送が絶対的な要件だったんだね。 汐留の高層ビルから見れば、陸…

保存とは

高岡は江戸の初期から鋳物の街だったそうな。なるほど、それが現在のアルミ産業に引き継がれているわけだね。その記憶をとどめている金屋町をふらりと歩くと、北端の方に気になるものがあった。案内板には、旧南部鋳造所の鉄を溶かすキューポラとそれに付随…

かわいらしい

「かわいらしい」というという言葉は、「かわいい」という言葉ほどではないにせよ、人によって感じ方や捉え方が大きく異なると思う。特に工場のような負の固定概念が入り込みやすい対象には適用しにくい気もする。でも、上の写真のような色づかいやその組み…

工場萌えクルーズ

昨日は『工場萌えクルーズ リバイバル』にて、たっぷり3時間を費やして川崎の京浜コンビナートを船で巡った。予定していた出張がなくなったので、急遽参加させていただいた。 実はこの企画、7年前の立ち上げ時には僕もお手伝いしていた(過去記事:秋の工…

エネルギー転換ツアー

すっかり時間が経ってしまったが、先週頭に福島県いわき市を中心とする一泊二日のモニターツアーを強行した。と言っても、あるモニターツアーに参加させていただくことに便乗して、こちらも裏テーマを勝手に設定してオリジナルのモニターツアーをかぶせてみ…

歴史のお勉強

昨年のお正月に敢行したオランダ旅行では、ロッテルダムのファン・ネレ工場にも行った。もっとも見学の予約をしていなかったので、ゲートから中には入れなかったんだけど。 ここは昨年の6月に世界遺産登録されたばかりの工場で、もともとは煙草、紅茶、コー…

木でできた山

以前から木材チップの原料ヤードを見てみたいなあ(木の上に群生する金属の林)と思っていたのだが、先日ついに実現した。伏木富山港にある「中越パルプ工業」のストックヤードの見学をさせていただいたのだ。これ(水鏡の風景)もその時の様子。 ものすごく…

水鏡の風景

伏木富山港にて、水たまりができたストックヤードの奥に、前夜に降った雪が少し溶けたウッドチップの原料山を見た。当初はそれがなんであるか全く理解できなかった。 港湾では、とても不思議で幻想的な光景に、思いがけずに出くわすことがある。でも、気楽に…

木の上に群生する金属の林

昨年の今頃は、今年よりもずっと余裕があった。北九州から広島まで、西日本方面のドボクをがっつり見て廻るツアーを強行することができたし。なんで今年はこうも余裕がないのかねえ、相変わらず自分は仕事の優先順位付けや段取りがヘタすぎるよなあ・・・。 …

工場観賞用駐車場

イオンタウン周南には、収容台数2000台を越える巨大な無料駐車場がある。しかも、駐車場からは周南コンビナートの一部を見ることもできるよ。まあそれほど良好な見え方ではないのだけど。JCT観賞用駐車場など、イオンさんにはたびたびお世話になっております…

トンネルフレーム

前回に引き続き、トンネルの風景を。 北陸自動車道を富山方面から東に進み糸魚川ICに近づくと、トンネル出口にセメント工場が見事にフレームインする。フォッサマグナの西縁に位置する姫川を跨ぐという情報も付加されて、様々なマニアが反応するであろう魅力…

地形由来工場

工場好きには言わずと知れた駅前超優良物件、安中の亜鉛精錬所。出張ついでに久しぶりに3回目の訪問。 臨海部の工場もいいけど、内陸部の工場ってのもいいよねえ。傾斜地を占領している要塞感がたまらないよねえ。地形つまり重力を利用した施設ってのは、プ…