はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

細部

寄り添う

リサイクルボックスの観察は、そこそこ頻繁に行っている。しかし、この二人の愛おしさを超えるものにはなかなか出会わない。 なぜか傾斜がついている場所に置かれて斜めになったリサイクルボックスが、きっちり水平を出してしっかりと佇む自販機に、そっと身…

キノコ岩橋

構造エンジニアのユルグ・コンツェットが携わったアルプス山中のトレッキングコース「Trutg dil Flem」には、同氏が設計した歩道橋が7つ架かっている。そのうちのひとつに、ものすごく深く狭い箇所を跨ぐ橋がある。英語名は「Mushroom Rock Bridge」であり、…

職人の筆さばき

ビルバオの横断歩道はとてもユニークだった。おそらく滑り止めとして、道路標示の上に凹凸がつけられているのだが、その文様がことごとくオリジナリティに溢れているのだ。道路標示の職人さんの気質や気分が色濃く反映されているのだろう。ぬかったことに、…

段差の更新履歴

職場の近所を通る私鉄の切土区間にある跨線橋。鉄道の建築限界をクリアするために、少々無理をしながら路面位置が持ち上げてられている。この様子には事情が積み重なっているような気がして、個人的にはがっちり心をつかまれた。そこで現状を観察しながら、…

昇降グラデーション

大阪湾の高潮から市街地を守る木津川水門。アーチ状の巨大バイザーゲートを有する、強烈なインパクトがある1970年につくられた構造物だ。大胆な構造システムや近未来的な造形テイストなどからしてみると、1960年につくられたオランダのハーゲスタイン水門を…

パッチワーク物件

大阪の木津川沿いに、たいへん魅力的な物件があった。一体化されている建物なんだと思うけど、増殖し続けているように見える。形状も外壁の素材も窓の位置も階段の配置も、目に入る何もかもが統一されていないので、ワクワク感しか生まれてこない。規模が小…

ドリアンのパターン

総合芸術文化施設のエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイは、その特異な見た目から「ドリアン」と呼ばれている。ドームの表面が三角錐のような形状の日よけで構成されているのだけど、これがたいへん刺激的であり、抵抗感がある人はたくさんいそうだ…

スナック様式の最高峰

先日、富岡製糸場を再訪した(参照:世界遺産のお手入れ)。その際に市街地を散策したのだが、これがなかなかしびれる街並みだった。なんというか、かつて多くの人々が行き交っていた頃の雑多な猥雑さを思い起こさせる、絶妙な昭和感が残されていたのだ。 そ…

上海のジャンクション景

そういえば上海の都市内高架橋って、プランターで緑化していた気がするなあと思い、過去の写真をごそごそと捜索してみた。すると、2006年に出張で行った際の写真が出てきた。もう10年も前という事実に驚愕しつつ、仕事をちょろりと抜けてジャンクションの写…

雨水のリズム

これほどの水汚れはなかなかお目にかかれない。下見板のように断面が斜めになっている塀の上に載せられた瓦を伝った水滴が、長い時間をかけてリズミカルで柔らかい文様を描いている。水平方向の段差によるシャープな陰影とのコントラストがいいね。富山県氷…

水が描いた縞模様

札幌で見かけた微妙にゆるい縞模様が描かれた壁面。線路をくぐるトンネルにアクセスするスロープなんだけど、おそらく設計者は意図していない模様だろう。 この擁壁の外側はレンガ風タイルによって化粧されており、結構な厚さの天端にも同じ素材がみっちり貼…

ドボクシャッハテスト

この写真がいったい何に見えるだろうか。 新興住宅地の家並みに見えた人は、無意識の中に幸せな家庭への強いあこがれがある。海外の墓地に見えた人は、遠い祖先のご加護を受けていることをもっと意識してこの壺を買うべきである。とか。 そんな感じで、土木…

アントワープのラスボス

最近ツイッターで「#いい配管」というステキなハッシュタグを見つけた。そこにアントワープのプラントの過去記事を載せたところ、そこそこの数のリツイートといいねをいただいた。なんだ、みんなこういうの好きなんじゃん。 同じ場所から撮った夜景写真を探…

くぐって越えて

先日、産業技術大学院大学に行く用事があった。関係者に千葉からのアクセス方法を訪ねると、品川の南にで少し行きにくいとのことだったので、若干ためらっていた。直前になってから地図で周辺を確認すると、特に物流系が極めて魅力的な湾岸エリアであること…

美しい汚れ

先日、「錆っていいですよね」と若い方に言われたので、調子に乗ってそのメカニズムや美しさについて熱弁をふるったところ、ドン引きされるに至った。まあそれはいつものことなので許容する(していただく)として、どこかで見た錆汁がらみの素敵な汚れを思…

端正な裏の顔

スイスのシオンという街にある、ローヌ川を跨ぐ高速道路の橋「シャンドリーヌ橋」。三次元的に三面が変化する主塔の形状がユニークなPC斜張橋なんだけど、この桁裏がすごくイケメン。コンクリートのトラスが心地よいリズム感を生み出しているし、桁高をグ…

鉄細工

エッフェル塔をつくったエッフェル社が施工し、エッフェル社をつくったエッフェル本人が設計したとされるガラビ橋。先日その写真を久しぶりに眺めて、うっとりしながらため息をついた。この鉄道橋は、鉄が夢の新素材だった時代の1884年に開通して、いまもな…

モニタリング触手

昨年の夏、奥利根のダムを一気に巡るツアー(参照:ある少年の夏の日)を行った。その際、滅多なことでは立ち入ることができない場所を、水資源機構の方々にご案内いただいた。矢木沢ダムの堤体直下にも潜入し、圧倒的なコンクリートアーチを下から見上げる…

連なる輪

デン・ハーグの地下トラム駅「Spui」はレム・コールハース率いるOMAの設計。地上、地下駐車場、トラムホームの重層構造が上手い具合にまとめられていて、複雑な空間構成が体感的に認知しやすくなっている。エスカレーターを下って地下のホームに行く途中、車…

チマチマの集積

新潟県長岡市を貫流する信濃川に架かる、橋長約850mの長生橋。その名の通り、1937(昭和12)年に架けられた76歳の橋梁である。細かい部材で構成されたトラスからは、老練な技術の積み重ねが感じられる。とてつもなく大きなスケールなのに、これほどヒューマ…

ゲーリーの家

デュッセルドルフにあるフランク・ゲーリー(FBアルバム:Frank Owen Gehry)が設計した集合住宅。例によって、その表皮はゆらぎやゆがみが支配的で、拠り所が全くない。室内ってどんな感じなんだろうかねえ。見てみたいけど、住みたくはない気がするなあ。

一点透視の新幹線駅

先日参加した「大人の社会派ツアー:第1章 セメントの道」の集合場所には、山口宇部空港や宇部市内など、様々なピックアップポイントが設定されていた。もともと前日入りするつもりだった僕は、宿泊地や行程などを深く考えることなく、リストの最後にあった…

赤い靴

西海橋はなんで支承と高欄だけ赤いのかねえ。わずかな面積にだけ差し色を使うという、オシャレ手法かねえ。素材感を活かしたモノトーンコーデの中に、ワンポイントで元気のいい色を使うと、大人カワイイ雰囲気が演出できる上に、着回しだってラクになるよ!…

もやもやした感情

なんだかんだ言って、つくる側の都合を優先した結果として生じたカオスな形態や構成や質感は、個人的に大好物である。その感情はなかなか言葉にならないけど。あらためて石井さんが用いた「萌え」という表現はうまいなあなんてことを、宇部の工業地帯に行っ…

宇宙系施設

今年の大型連休は長野方面に2泊3日で砂防、用水、ダムなどの水系インフラを中心に、駆け足で見て廻った。そこには果てしなく続く自然との闘いがリアルに感じられ、とても良質の刺激を受けることができた。 行程は直前になってから慌てて組み立てたので、宿泊…

色のサンプリング

もともと僕にとって写真を撮ることは、対象となるモノや空間の様子を資料として記録するためである。フィルムカメラのころは、メカとしてのカメラは大好きだったものの、写真そのものは被写体が写っていればいいという程度の認識だった。 ここ10年ほどのデジ…

汚れのデザイン

いよいよ梅雨の時期が来てしまった。昨年は海外逃亡していたので、極めて快適に過ごすことができたのだが、今年はあの不快感を避けられそうもない。かなりマイナーな気分ながらも、いつもの通勤路のそばに、梅雨らしい風情を醸し出す素敵な壁を見つけた。 階…

直接的壁面緑化

これほど屈託のないカラーリングや奔放なパイプさばきは、一周回って清々しい気分になるね。

リピート

同じものが繰り返されるってことに大きな魅力を感じる。それは宗教音楽やテクノから受ける印象によく似ている。たとえば、繰り返される旋律、淡々とした音色、規則正しいリズム、単調な構成。こうした要素が、覚醒や恍惚や高揚といったいわゆるトランス状態…

フーチング

ダムの堤体を地盤に定着させる部分を「フーチング」と呼ぶ。その多くは階段状になっており、堤体のマッシブなコンクリート面や岩盤の有機的なテクスチャーとのコントラストが面白く、個人的にはとても好きな部位のひとつである。 橋脚や擁壁などでも基礎の地…