はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

設備

ホンモノになりたい

芸術や技術などの創造的行為において、自然の成り立ちや他者の技能を体験的に模倣することは極めて重要な意義がある。模倣を繰り返すことで良質の学びを得るのだ。そう考えると、丸太風の外観をまとったコンクリート製水飲み場も、模倣によって新たな価値を…

斜線の立体ファサード

松本駅の近くにあり、バスターミナルや商業施設が入っている大型複合施設「アルピコプラザ」。大きな床面積を持つ施設には、各フロアから直接地上に到達できる避難階段が複数必要になる。このビルは、そんなルールを正面から受け止め、避難階段によくある申…

魔改造水飲み場

弘前では雨に降られたことでまち歩きを断念し、8つある前川國男建築を巡ることに注力した。弘前公園の中にある弘前市民会館と弘前市立博物館の外観を一通り眺め終えると、目の前にあった水飲み場に目を奪われた。 3方向に分岐する水道管が、躯体の表面に露…

高低差の折り合い

狭い敷地の中で円弧を描くように高低差を解消している階段とスロープ。エッジの効いた段差と滑らかな曲面の対比は、得も言われぬ緊張感がある。周辺も含めたコンクリートのブルータルな造形とテクスチャーが、より印象強いものにしている。 なんというか、こ…

更新履歴

あるビルの壁面に、さまざまなパイプ、ケーブル、換気口、窓などの設備が複雑に入り組んでいる。その縦横無尽でアクロバティックな様子を眺めていると、それぞれの登場人物が、お互いに文句を言いながらも、尊重しつつ、共存しているように思う。そして、自…

上昇と下降

僕は子どもの頃にエッシャーの絵にのめり込んでいた。おそらくエッシャー展に連れて行ってもらったのだろう、リトグラフのポストカードを何枚か手に入れ、額に入れて自室にずっと飾っていた。ありがたいことに実家で保管してくれていたその額を、数年前に受…

名塔に大空間を与えたEV

あらためて写真を眺めても、エッフェル塔はすごいな。ここまで多くの人に感動を与えられる構造物も珍しいんじゃないか。誕生当時のディスられっぷりは凄まじかったようだが。 ひとつひとつの部材が極めて注意深く構成された肌理の細かさにも驚愕するけど、な…

不当な扱い

今日は駐車場に関する文章を書いていたのだが、すっかり迷走してしまった。駐車場って現代の都市において極めて重要な役割を担っているのに、不当に低く扱われているんじゃないかと憤慨しはじめたのだ。 駅とか空港などの交通モードが切り替わる場所って、そ…

喫煙祭壇

昨年の夏、山口へ出張した際に街をうろついていたら、たまたまブルータルな雰囲気の建物の脇を通った。よく見てみると、山口市民会館と書かれている。回り込んでみると特徴的な階段が目に止まり、誘われるように登った。そのアプローチの先にあったのが、上…

迷彩ペイント扉

先日たまたま通りかかった複合商業施設にて、衝撃的な消火設備や電源設備の扉に出会った。そこそこの厚みがある石材をゴージャスに貼り付けて、おそらく地中海の石積風の演出を徹底している壁面もすごいが、なんとスチールの扉部分は手書きでペイントされて…

整っていない大階段

福島県相馬市の伝承鎮魂祈念館に向かう最中、防潮堤に張り付いている大きな階段が目に止まった。その存在感と同時に強い違和感を抱きつつ、ザワザワしながら通り過ぎた。 この階段のすぐ先にある祈念館と慰霊碑を訪問し、震災前と震災直後の風景写真や映像を…

室外機の新陳代謝

インドのデリーでは、様々な室外機のありようを目撃することができた。たいへんな傑作がいくつもあったが、その中でも秀逸だったのがこの室外機群。ここまで立体的な構成は、なかなかお目にかかれない。自己複製を繰り返すような生命感に満ちている。きっと…

DIYマインド

先月のニューデリー出張では、毎朝1時間ほどホテルの近所を散歩した。全く観光客などいない住宅地だったので、なんとなく現地の生活を垣間見ることができ、たいへんワクワクする刺激的な時間となった。 そこで衝撃のDIY作工物を見かけた。おそらく大五郎的な…

世界屈指の夜景

素晴らしい電波塔を至近距離から拝めるという稲佐山山頂に行ってきた。なにしろ、そのための立派な展望台があるのだ。乗ろうと意気込んでいたロープウェイが点検のために運休中だったことや、やたらと寒かったことなど、全く気にならないほどステキな眺めだ…

試される平衡感覚

自走式立体駐車場に車を止めるとき、なんとなくいつもの感覚からずれてしまい、うまく駐車マスにおさまらないときがある。いろんな要因が重なっていそうだけど、上の写真のような螺旋状の走行路と駐車マスが同一平面にある傾床式駐車場では、それが頻発する…

群生するプランター

既報の通り上海の都市内ジャンクションは見事な密度感であるが、大量のプランターによる緑化も見逃せないポイント。本ブログでたびたび取り上げている「緑化とは何か」問題を、ガツンと突きつけられる。 高速で走行する車から草花を鑑賞するためとも思えない…

技術革新が奪った仕事

先日FBを見ていたら、友人が近所の廃料金所ブースを紹介していた。この近くはたまに通っていたはずなのに、いままで気付かなかった。自分の不明にちょっとした悔しさを抱きつつ、あらためて通勤時に寄り道してみた。 実際に稼働している自動精算機レーンの隣…

駐車場鑑賞

クルマは移動することが本質だと考えると、それ以外の時は軽視されやすいってことが理解できる。クルマたちを街の中で一時保管する場所は、ひっそりとしがちで、もちろんそれほどコストをかけてもらえない。だから一カ所に集約して何層にも垂直方向に重ねて…

あとからトンネル

先日、打合せの最中に2011年の写真を遡っていたら、ドイツのアウトバーンで撮った写真が視界に入り、気にかかった。アーチ状のコンクリートの梁が、両側の壁からポコッと生えた出っ張りに載せられて、結構な延長にわたって連続して道路を横断している施工中…

絶景シークエンス

沖縄本島南部の南城市の高台から海岸までを一気に下るS字カーブは、絶景ポイントとしてネット上で多数取り上げられていた。「ニライ橋」と「カナイ橋」で構成される道路景観は、自衛隊の用地同士を結ぶ通路上から展望することができた。 もちろんその眺望に…

海上都市の領域

前回エントリの投稿後、学生時代に撮影した膨大な調査写真をずいぶん前に当時在籍していた研究室から引き上げたようなことを思い出して、職場の棚の最上部に押し込んである段ボール箱に手を突っ込んでみた。すると驚いたことに、「アクアポリス」の写真があ…

ステキ階段

建築空間において、階段はたいへん魅力的な存在だよねえ。表情豊かな造形という点でも、移動による視点の変化でも、昇降するという意味においても。もちろん、建築家はそれを強く意識しながら、腕の見せ所と言わんばかりに力が入りまくるのだろう。チューリ…

祭壇駐車場

墨田区北部には興味深い物件がごろごろ転がっている。その数があまりにも多く、時間あたりの距離が極めて短いことになってしまうので、まち歩きをする際には注意を要する。 この駐車場の路面標示は、妄想をかき立てられる。おそらく4つのマスを埋めると、何…

鋳物とコンクリートと竹

昨日は墨田区北部を歩き回った。このエリアの探索は何度目になるかわからないが、訪問するたびに新鮮な発見が得られる。生活者が街の主役として直接的に介入している様相は、たまらない魅力を感じる。この人の手の存在が感じられる「下町感」とも言える独特…

巨大な箱

横浜の運河沿いの倉庫の壁面には、窓が一切なく、換気口がたくさん設けられている。その眺めはヒューマンスケールを確実に逸脱しており、そこが魅力のひとつと言えなくもない。 先週、不幸にも三芳で発生してしまった大規模倉庫火災は、鎮火に6日もかかった…

高級桟橋滑走路

先日羽田空港のA滑走路に着陸した際に、D滑走路のジャケット工法を説明しやすい写真を撮ることができた。東京湾に突き出したD滑走路の南西側半分は、周辺環境への負荷をかけないために、多摩川の流れを遮らない桟橋形式が採用されている。そりゃもちろん…

バズる室外機

たびたびツイッターなどで室外機について触れているが、まさか1万リツイートを越えるとは予想もしていなかった。5日前にシンガポールで見た、ショップハウスの裏にみっちり貼り付いた室外機群が突然バズったのだ。たしかに、現代的な高層ビル群の背景と、野…

存在を誇示するダクト

本日はベルギーの街角デザインの話をする機会があった。そのプレゼン資料の材料を集めている最中に、アントワープ中央駅の地下ホームの写真を久しぶりに見て、あらためて衝撃を受けた。なにこのダクトの存在感。なにこの無駄に注意を喚起するカラーリング。…

つぶれたおにぎり

先日訪れた栃木県鹿沼市にて、たまたまバスの車窓から見た案内標識。国道121号、国道293号、国道352号の3つが重複していることで、路線番号を示す通称「おにぎり」が6連になっている。これって珍しいんじゃないだろうか。少なくとも、僕ははじめて見た。ム…

スパイラルスロープ

これまでも様々な立体駐車場の螺旋スロープを見てきたが、先日訪れたチューリッヒにも素晴らしい物件があった。フラットルーフと隣接するオフィス部分とのコントラストが効いた、ため息が出るほど整ったダブルらせんだ。別件をストリートビューで調べていた…