はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

認識

わかる形

橋梁の構造形式の中でも、アーチ形式が好きな人はかなり多い気がする。たぶん、アーチは“直感的に理解できる形”なんだと思う。重力のある環境の中で生活してきた経験を無意識的に動員して、力の流れをなんとなく了解できるのだと思う。 内部空間を生み出す建…

仮想的現実空間

東京の丸ビルと新丸ビルの間にある、昨年できた地下道。 その眺めは現実を通り越して、もはや、CGのようだ。ここにいると、バーチャル空間の中に身を置いているような気分を味わえる。SFも身近になったもんだ。 ふと気づくと、CGはどこまで現実を再現…

空想科学の街

上海の街を高速道路から見下ろしたとき、既視感というか、なんとなく懐かしさを覚えた。そのときはわからなかったんだけど、しばらくしてからふと思い出した。昔の未来、そう、小松崎茂の世界だ。かつて少年だった大人は、必ず目にしたことがあるはず。改め…

直下からの視線

昨日は「ジャンクションツアー臨海編」に参加してきた。前回の「新春ジャンクション見物ツアー」では都市内の高密度なジャンクションを見たのに対して、今回は湾岸エリアの比較的伸びやかなジャンクションを見て回った。最初は辰巳JCT、湾岸線を外側から…

アートの中の工場

日経新聞の朝刊の文化面で、今週の月曜日から「テクノスケープ十選」というタイトルのコーナーが掲載されている。工業景観をテーマとしている過去のアート作品を取り上げて、その作品の背景を解説しつつ、テクノスケープの面白さを分析するという内容。 筆者…

非常時インフラの日常

先週末、写真集「恋する水門」の佐藤さんがガイドをしてくださった「水門ツアー」に参加してきた。これまで自分が見てきた領域は、土木のほんの一部であることを再認識させられた。要するに、交通系に偏っていた。交通系インフラは、たいてい常時活躍してい…

良い景観

先日、朝日を受けて赤く染まる富士山を見た。当然のごとく、その荘厳な景観に感激した。 おそらく、日本人の誰もが富士山を中心とする景観は「良い」と感じるだろう。もっと広げて言えば、人間の手があまり入っていない自然の景観は「良い」と決めつけて良い…

平面へのまなざし

昨日、NHK・BS2の「熱中時間」という番組に、友人の杉浦さんが「壁熱中人」として出演した。これが、とても面白かった。当初あっけにとられて引き気味だったレギュラー出演者たちが彼女の壁写真にどんどん引き込まれていく様は、以前の自分自身を見て…

熱の道

コンビナートでは、大小のパイプをよく見かける。パイプが群になって、全体が構成されているようにも感じる。個人的には、大好きな存在だ。そもそもコンビナートは『結合』という意味のロシア語なので、プラント同士をつないで様々な物質をやり取りしている…

都会らしさ

高度空間利用された汐留の道路用地。上から、新交通システムの軌道、周辺の建物と駅舎を結ぶペデストリアンデッキ、道路がある地盤、サンクンガーデンがある地下空間の4層構造である。 ふと気がつくと、都市空間は人の空間認識能力を超えるほどの複雑さを伴…

自然な拒否反応

フランスの文人であるモーパッサンは晩年、1889年のパリ万博に際して建設されたエッフェル塔の中にあるレストランに、足しげく通っていたそうだ。その理由は「ここなら、あの忌々しい巨大な骸骨が目に入らない」からなんだと。美しいパリの街の景観を損なう…

都市の緑

首都高を走っていると、東京は緑が多いことに気づく。皇居、赤坂離宮、新宿御苑、明治神宮などの大きな樹林があるからだろう。それに、街のあちこちで街路樹が整備されてたり、ちょっとした公園があったり、ちょっとした屋敷林があったりする。つまり、東京…

ノイズリダクション

吊橋の内部景観。 このような長大橋梁を渡るとき、僕は運転しながらも、ついつい周りの風景を眺めてしまう。いつもワクワクして、いい気分になり、感激する。 ところが、その内部景観を写真に撮ってみても、そのドキドキ感は伝わらない。思いのほか、いろん…

イナカモノノヒトリゴト

あらためて言うことでもないけど。東京って、なにもかもがものすごい密度で集積しているんだね。しかも、その範囲がとてつもなく大きい。圧倒されっぱなしで、ちょっと引いてしまう。

ねじれた関係

田園風景の中にポツンと架けられたあるアーチ橋に近づくと、違和感というか気持ち悪さがどんどん増大する。橋がゆがんで見えるのだ。ちょっとしたワンダースケープである。 その理由は、道路と川が斜めに交差しているために、2つのアーチリブが平面図上で橋…

リアル・ダンジョン

地下は迷いやすい。その理由はいくつか考えられるが、“迷い”の種になる“戸惑い”が生じやすいポイントがある。 それは、分岐と昇降。 直角や1階層のような明快さがない場合、さらに戸惑いは大きくなる。これが同時に出てくる場面は、なかなかの迫力だ。ゲー…

見えなかった風景

乱暴な言い方をすると、多くの人は工業の風景が見えない。 なぜなら、多くの人は工業を“悪”として捉えているから。 できるだけ自分から遠ざけたい存在だから。ところが、少々風向きが変わってきた。 そのきっかけは、『工場萌え』(石井哲、大山顕)の出版。…

内臓建築

このような巨大装置は通常、“建築物”と認識されるように思う。ところが巨大装置は“建築物”ではない。建築物は通常、骨と皮によって“内部空間”を生み出すことが本質である。でも、巨大装置は内部空間の代わりにある“内臓”が本質なのだ。一般にギャップという…

煙のイメージ

工場の装置は、その場にあって動かない。 しかし、その中身は激しくうごめいている。 24時間、年中無休で。 その活動の証は、立ち昇る白煙に見ることができる。 煙と言っても、ただの水蒸気である。 つまり、無害。 かつて、装置が排出する煙は悪の象徴だ…

テクノロジーの眺め

最近、工場やダムなどの巨大建造物の鑑賞がブームになっている。 新聞、雑誌、TV番組などのメディアでは、4月頃から頻繁に取り上げるようになった。 ちょっとした情報バブルである。この現象は、一過性の流行なのだろうか。 なんとなく、違う気がする。流…