はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

博物館でのぞき


ドイツの科学技術を結集した博物館がミュンヘンにある。その名も「ドイツ博物館」。ここにはなんと古今東西の橋梁建設技術の常設展示があり、その目玉として実際に歩いて構造を体験できるシュライヒの歩道橋が架けられているってことは、「ブリュッケンバウ 博物館で学ぶ橋の文化と技術」という同館のガイド本により以前から知っていた。あ、この本はなかなかいいよ。構造や施工の歴史的変遷やポイントを概観することができる。もちろんドイツの橋が中心になっているけど、他国のエポックであっても、しっかり示してくれている。アイントホーフェンからミュンヘンは少々行きにくいのだけど、やはり橋梁巡礼の地として訪れなけれないわけにはいかないと奮起し、今回ようやく実現した。
日曜日の朝、颯爽とホテルを出て地下鉄に乗り、満を持して博物館へ。かなりテンションが高かったのだが、さすがはヨーロッパ、一筋縄ではいかない。最寄りの地下鉄駅が工事中で完全封鎖であっさり通過してしまった。いきなり出鼻をくじかれた格好だ。次の駅で下車し、バスに乗り換えた上に少し歩いて、なんとかたどり着いた。思えば、このあたりからすでに雲行きが怪しかったんだな。
入り口で入場券を購入した後に、エリアマップで橋梁コーナーを探した。何しろとても大きな博物館。目当ての場所を最初に把握しておかないと、迷子になること間違いない。ところが、なかなか見つからない。おかしいなと思いながら、近くにインフォメーションがあったので、ガイド本を片手に片言の英語で聞いてみた。すると全く予期せぬ答えが。すごく残念そうに、「クローズ」と。
え?なんですと?いったいどういうこと?僕はなんのためにミュンヘンまで来たの?
どうやら橋のコーナーは改修工事をしているらしい。言われてみると、博物館の外観の一部は養生シートで覆われていたな。インフォの係員はおすすめのコーナーを熱心に教えてくれたのだが、すでに心ここにあらず。ものすごい勢いでテンションが暴落してしまった。
しばらくした後、すでにチケットも買ってしまったことだし、せっかく来たので船や飛行機などの他の展示でも見てみようかと思って入場した。ところが真っ先に向かったのは、改修中の橋のコーナー。どうにかならないものかと閉ざされた扉をこじ開けようとした。なんかもう未練たらたらでストーカーにまでなってしまったようだ。しまいには、擦りガラスと枠の間に高さ2mmほどの隙間を見つけ、そこから中をのぞき込んだ。そしたら、あった!シュライヒの吊橋があった!微妙にときめいて何度ものぞき込み、写真まで撮り始めたので、おそらく周りの人からするとかなりの変態に思えたことだろう。
なんだかんだと他の展示をしっかり楽しんだ後、ミュンヘンに来た理由を探すため、ビヤホールに向かった。調子に乗って現地に来る前に、しっかり下調べをしておかないとね。ホテルに戻ってから博物館ホームページの橋のコーナーをみてみたら、当然のことだが、閉鎖されていることがしっかり記載されていたよ。


ブリュッケンバウ―博物館で学ぶ橋の文化と技術

ブリュッケンバウ―博物館で学ぶ橋の文化と技術