はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ザラついたお肌

耐候性鋼材による鉄道トラス橋。耐候性鋼材ってのは、あらかじめ表面に錆を形成させて、それ以上の腐食を防止する鋼材のこと。塗り替えが必要ないため、塗装による防錆処理よりも維持管理の面で優れている。もちろん見た目は錆なので、嫌われやすい。「新しい=良い、古い=悪い」という価値観からすると、最悪なのかもしれない。架けたばかりの橋でも、市民から「もう錆びてるぞ!」と通報されることもあるとか。

耐候性鋼材を都市内で使うには、大きな勇気、優れたセンス、繊細な錆汁処理が必要だ。要するに、やめたほうが無難だ。その反対に、自然の環境の中では風景に溶け込みやすい。色彩には無限の選択肢がある塗装よりも、はるかに。その理由は、表面の平滑度にある。錆によるザラザラのお肌は、細かい陰影が表面の輝度を落とし、全体のコントラストが弱まる。少しだけ自然のものに近づくと考えて良い。一方、塗装の均質で光沢がある面はくっきりはっきりするために、何色で塗ろうが自然の中では必然的に目立つ。ツルツルなお肌が良いとは限らないのだ。人と違って。