はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

純粋地下街(1)

地下街については、10+1のウェブサイトに「地下設計製図資料集成」というフィールドワーク記録集がある。何かとわかりにくい地下空間を理解するための手がかりとなる、とても面白い地下論考がたくさん綴られている。
その中で、日本で最初に建設された神田須田町の地下街が「ほんとうの地下街」として紹介されている。この極めて小さな地下街は、道路を横断する役割などはなく、非常に特殊な成り立ちをしている。この「なにも繋いでいない」地下街を通る人は「この地下街自体に何か目的を持ってやって来る」ということから、「ほんとうの地下街」としているのだ。
しかし実際は、地下鉄銀座線の神田駅の出入口として利用されている。この点で、純粋性が低いと言わざるを得ない。この空間自体は、開削施工された銀座線と同時に作られた通路なので、当然のことだ。地下街は地下鉄や建物の建設とセットで通路の役割を担って整備されるものであって、地下街だけを目的につくられた地下街など、存在するはずもない。
そう思い込んでいたのだが、ソウルの地下鉄を利用したとき、周辺案内図を見てギョッとした。そこには、地下鉄とは切り離された、完全に独立した地下街が描かれていたのだ。しかも、いくつもある。そう、これが夢にまで見た「純粋地下街」なのではないだろうか。
このような独立した地下街が、なぜつくられたのか。道路拡幅時の換地保障か。それなら、ビルをつくったほうが安上がりだろう。地下横断歩道を拡幅したのか。その程度の理由で、これほどの面積を開削するはずはない。など、あれこれ考えてみたが、上手い結論に至らなかった。
韓国人の友人に手伝ってもらい調べてみると、思わぬ理由がそこにあった。(次回へつづく。たぶん。)