はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

純粋地下街(2)

前のエントリの続き。
韓国にはどこにもつながっていない「純粋地下街」がいくつか存在している。日本では、ほぼ全ての地下街が鉄道駅に接続しているというのに。
韓国で最初の地下商店街がソウル市庁前に開業したのが1967年。最初の地下鉄1号線が開通したのが1974年。つまり、地下街開発と地下鉄開発が完全に切り離されていたことは、この事実からも明らかである。
友人の韓国人経由でその背景を関係者に問い合わせてみると、全く予想していなかった答えが返ってきた。なんと、地下街は有事の際の『防空壕』なのだそうな。なるほど、日本とは事情が異なるんだね。停戦しているとは言え、戦争状態にある国なんだね。すっかり忘れていたよ。
地下街が盛んに建設されていた頃は、民主化が実現する前の軍事政権の時代。南北の緊張が緩和してきた現在、地下鉄整備と既存の地下街との接続をセットで行って、地下ネットワークの拡充を図っているそうだ。その結果、なんとなく日本の地下に似た雰囲気が形成されているけど、元々の発想は全然違うものだったんだね。
ともあれ、地下は地上の人間社会のしがらみが色濃く投影される空間ということか。そもそも、地下は純情を保つことなどできない空間なのか。