はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

平面へのまなざし


昨日、NHK・BS2の「熱中時間」という番組に、友人の杉浦さんが「壁熱中人」として出演した。これが、とても面白かった。当初あっけにとられて引き気味だったレギュラー出演者たちが彼女の壁写真にどんどん引き込まれていく様は、以前の自分自身を見ているようで、とてもうれしかった。特に、名越康文氏の食いつきっぷりと解説には、感動すら覚えた。うん、相変わらずいい番組だね。

彼女は、自然や偶然に支配されて形成された壁面に、アートにも似た力が宿っていることを発見し、それを巧みに切り出している。彼女が切り取る壁は、まさにアート。見事な抽象絵画だ。数多のアーティストの苦悩を、偶然の産物が軽く凌駕してしまっているのではないかと、余計なことが心配になる。彼女は、薄汚れた壁を絵画として認識する視点ってのを、どうやって獲得したのだろうか。

ちなみに、僕も最近は彼女の活動にすっかり感化されて、時々壁を撮ってみたりするが、やはり彼女の作品とのレベルの差は歴然である。どうしても立体物として壁を眺めてしまい、平面へのまなざしがなかなか獲得できないのだ。でも、やってみるとかなり面白い行為なので、今後も彼女の真似を続けたいと思っている。