はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

都市土木


建設業界の専門誌に、「日経コンストラクション」という雑誌がある。主に土木業界の経済・経営の情報や実務的な技術情報を扱っている隔週の雑誌で、発行部数は3万部弱もある。
この雑誌の新春特別号(1月11日号)では西新宿ジャンクションが表紙を飾って、「都市土木、ここに極まる」という特集記事が組まれている。ジャンクション、換気塔、トンネル、都市河川などが、素晴らしいグラビア写真で紹介されているのだ。たとえば、大橋ジャンクションの巨大コンクリート壁、道頓堀の河川空間など。ともすれば「悪い」と言われるような、現代社会の矛盾をはらんだややこしい景観たちだ。

そんなインフラの眺めを、「どうだ、かっこいいだろう!」と言わんばかりに、堂々と掲載していることに強く共感する。うん、「都市土木」っていう言葉もなかなかいいね。この記事はぜひとも多くの人に見ていただきたいと思うけど、なかなか機会がないかもね。書店では売ってないみたいだし。

この特集には、東大の内藤廣教授のコメントが掲載されている。「街の形成の過程で、都市土木が後追いになっている」「ダイナミズムを表すデザイン力が都市土木に携わる土木技術者には必要になるだろう」などと述べて、関係者を叱咤激励している。ちなみに内藤さんは現在、有名な建築家であるにもかかわらず、東大の土木工学で景観研究室を率いている。聞いたところでは、たとえば構造などの土木本流の研究室よりも、学生にずっと人気がある研究室なんだそうな。

こういった記事の掲載や、建築家を教授に迎え入れた土木教育の本丸の動きからして、土木業界の内部でも「都市の新風景」へのまなざしが変わってきていると見ていいだろう。個人的には、この流れを歓迎したい。そして、土木業界から外側に向けてメッセージを強く発信していきたいね。土木って素晴らしいってことを。もちろん、それを実践していく技術者や役人をきちんと輩出していってほしい。東大を筆頭として。