はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

原油の眺め


「原油」という言葉は、新聞やTVのニュースに毎日のように登場する。経済に与える影響が甚大だから、みんな極めて敏感になる。なので、なんとなく知ってるつもりになりやすい。でも本当は、よく知らないと思う。なにしろ、生の原油に触れる機会なんて、なかなかないからね。

以前、ある製油所で様々な原油のサンプルを見せてもらったことがある。それらの色や匂いや粘り気などの性状は、産地によって驚くほど異なっていた。それぞれの原油に含まれる物質やその比率が全然違うからだ。そして、原油には「銘柄」があることを知った。アラビアンライト、イラニアンヘビー、カフジ、タピスブレンド、スマトラライト、北海ブレント、大慶・・・、100種類以上あると言われている銘柄は、まるでコーヒーやタバコのようだ。

一言で「原油」と言っても、いろんな物質が複雑に混ざっているものであることや、そこに含まれる物質を取り分けてようやく使えるようになることを、はじめて実感できた。そんなことを知った後でタンクや蒸留塔を眺めてみると、少しだけ見え方が変わったような気がする。原油高は困りもんだが。