はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ブラジルのパイプ


最近、自分はかなりのパイプ好きであることを自覚しはじめた。あるとき、工場の眺めの何が好きかと問われた場面で、悩んだあげくにうっかり「パイプ感」と言ってしまったのだ。でも、世の中にはもっとパイプを愛している人がいる。たとえば、映画監督のテリー・ギリアム。間違いなく彼はパイプを偏愛している。もしかすると、僕はギリアムの影響でパイプ好きになったのかも。
ギリアム作品にはいろんなパターンでパイプが登場する。たとえば、「空飛ぶモンティ・パイソン」のオープニング・アニメーションとか、「フィッシャー・キング」のイカれてしまった学者が住む機械室の場面とか、「12モンキーズ」の未来の地下研究施設の場面とか、印象的な場面のアイテムとして頻繁にパイプが使われている。その中でも、「未来世紀ブラジル」という傑作映画でのパイプの扱い方はすごい。なにしろ、全てのパイプを管理しているのが中央政府という設定なのだ。以下、アマゾンの商品説明より。

個人情報のすみずみまで管理されている未来社会の中、情報省記録局の小役人サム(ジョナサン・プライス)は、いつも夢の世界に想いをはせることで、息詰まるようなストレスをしのいでいた。そんなある日、同僚が叩きつぶしたハエのせいでインプットのミスが起こり、靴職人のバトルがテロリストのタトル(ロバート・デ・ニーロ)と間違って捕らえられてしまうという事件が発生する…。
管理社会を痛切に批判した、鬼才テリー・ギリアム監督によるSFファンタジーの傑作。ユニーク極まる未来社会の設定の数々に、ザビア・クガートのサンバ曲「ブラジル」が効果的に融合し、豊潤な映画のイメージとして映えわたる。初公開の折りは、プロデューサー独断による短縮版製作などをめぐっての闘いを記録した『バトル・オブ・ブラジル』が出版されたりと、ギリアム監督の反骨の姿勢も話題となった。(的田也寸志)


高度に情報化された未来社会を描いているわけだけど、全てがデジタルではなくてアナログ。情報媒体はパイプを通る「紙」ってところがおかしい。冒頭の「お宅のダクトは流行遅れではありませんか?」というテレビCMがおかしい。富裕層になるとパイプの露出度が低くなるところがおかしい。パイプを勝手に修理してしまうもぐりの配管工がテロリストとして政府からマークされているところがおかしい。
これを見ずしてパイプを語る事なかれと言いたいくらい、素晴らしいパイプ映画。1985年に公開されたにも関わらず、20年以上経った今でも新鮮な世界と皮肉な現実を突きつけてくれる。まだ観ていないパイプ好きの方は、ぜひご覧あれ。すてきなインダストリアル・スケープも多数登場するよ。やたら炎を吹き出すプラントとか、原発のクーリングタワーの内部とか。でも、ちっとも面白くないという人の方が確率的には多い気がするので、保証はしかねるのだけど。
(ついでに、過去のエントリからパイプ関連をピックアップしてみた。好きだという割に、少ないね。|熱の道汚れを誘うもの曲げる理由


未来世紀ブラジル [DVD]

未来世紀ブラジル [DVD]