はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

段違い平行道


職場の近くにちょっと気になる道路がある。2車線の道路に平行して、高低差がある側道が、300mほどの長さにわたって不自然に延びているのだ。間の法面には背の高い木が生長して列をなし、側道の端部は路面がぐにゃりとねじれて強引にすり付けられている。街の構成からしてもブールバールのような目抜き通りではないし、広域的に見ても幹線道路にはなり得ない。とにかく違和感満載の謎めいた道路だ。
先日ほかの調べ物のために戦時中の地図を見ていたら、たまたまその謎があっけなく解けてしまった。なんと、側道は軍用鉄道の跡地だったのだ。両側の地形に高低差がある区間だけ、段差が解消できなくて仕方なく法面が残されたのだろう。
街と地図をよく見比べてみると、ちゃんと履歴が残されているんだね。不自然な空間構成には、それなりの理由があるんだね。宮本佳明さんは、こんな風景のほころびを「環境ノイズエレメント」と呼んで、たくさん収集されているよ。街歩きの参考書として、ぜひ。


環境ノイズを読み、風景をつくる。 (建築文化シナジー)

環境ノイズを読み、風景をつくる。 (建築文化シナジー)