はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

川の上の街


先週末、東京下町に展開していた運河の跡を巡り歩くというツアーに参加してきた。浜町川の跡地を歩いていたとき、あしたのジョーの冒頭に出てくるドヤ街のような、味わい深いたたずまいの長屋群があった。そして、とても幸運なことに、住人の方にお話を伺うことができた。

この長屋は1951年につくられて、多くの方が人形町あたりから移り住んできたという。おそらく、1949年にGHQから発せられた露店撤廃令がきっかけとなったのだろう。秋葉原ラジオセンター、ニュー新橋ビル、三原橋地下街などの成り立ちと同じように、ヤミ市の露天商を収容する目的で一気呵成につくられたものだと思う。いわば戦後のドサクサの痕跡なわけで、権利関係はとても複雑な構造になっていると思われる。

フレームは鉄筋コンクリート造で基本は2階建て。内部はかなり狭くて低く、階段は腰を曲げなければ登れなかったとのこと。そして各々の住民が自由に増改築を行い、不揃いな3階建てに成長していったんだそうな。もちろん、建築基準法なんて適用されていないだろう。

バブルの頃までは商店街として活況を呈していたが、その後は転出者が相次いで次第に静かになってしまい、とても残念だと話してくださった。いずれは消えゆく運命にあるのかと思うと、ちょっぴり感傷的になってしまう。

写真は駐輪場となった区画に現れた長屋の断面。ちなみに壁の杉浦さんは、この地域の壁をすでに押さえているとのこと。さすが。