はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

門をくぐる


ちゃんとした門をくぐるときには緊張や高揚を感じることがあるけど、船に乗って水門をくぐる体験は格別だよ。
巨大な鉄の平面は、その圧倒的な質量で通る者を静かに威嚇してくる。非常時にはギロチンのように水路を遮断し、とんでもない水圧に耐えて街を守ってくれる頼もしいやつなんだけど、全く愛想がない。だから水門をくぐるときには、顔色をチラチラうかがって、すいませんと言いつつ軽く会釈してしまう。そこを抜けたとき、緊張から一気に解き放たれて、自然と笑顔になる。
そんな自分の卑屈さを恥じつつも、何となくすっきりするんだよね。やっぱり門ってのは、特別な建造物だ。