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はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

幸せな構造物


以前からぜひ見たいと思っていた琵琶湖疏水の水路閣に行くことができた。ローマの水道橋のような重厚なフォルムや歴史を感じさせるレンガのテクスチャーが、鮮やかな紅葉に引き立てられていっそう印象的だった。
水路閣は明治21年につくられた。南禅寺という700年の歴史を持つ格式高い寺院の中に、突如として近代が挿入されている。地形の高低差を解消するために水路を遠回りさせたら、どうしても南禅寺の境内の中に入らざるを得なくなっちゃったんだろうね。それで重要な建物や庭を回避するために、仕方なく境内を横切る橋梁にしたんだろう。きっと当時の関係者も歴史に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだったと思う。だからこそ緻密で丁寧な仕事になったんじゃないかな。
そんな水路閣はすっかり観光名所になっている。観光ガイドには必ず載っているし、訪れたときもひっきりなしにカメラを向けられていた。水路閣を見るために南禅寺に来た人は少ないかもしれないが、南禅寺ついでに立ち寄った人は多いのだろう。人々の生活を支えている土木構造物であることが意識されなくても、その歴史の一部になった佇まいにみんな感激していく。幸せな構造物だよね。いまも現役だし。