はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

使徒、襲来


はじめてネット上でこの歩道橋の写真を見たとき、なにかの冗談かと思った。有機的な白い表皮を持つモノフォルムは、そもそも橋に見えないよね。アニメ好きがつくった良く出来たCGかと思ったのだが、どうやら現実のもののようだ。じっくり見ていくにつれ、徐々にただものではないという感情がわき起こってきた。そして、これはなんとしても見ておかねばなるまいと、ルクセンブルクのEsch-sur-Alzetteという街に行ってきた。
このエッシュ歩道橋は、鉄道駅の上空を跨いで市街地と高台の公園を結んでいる。スパンは110m、高低差は21m。設計はネイ事務所で、2009年に竣工した。全体はカギ型のラーメン構造になっていて、鋼板で構成された閉断面のシェルに、トラスを形成する穴が開けられている。
こんなインパクトのある姿をしていながら、用途がない飾りの部材はひとつもなく、ちゃんと最適化されているようだ。大きなストロークで描かれたような伸びやかなフォルムも、変化していく側面の穴の形状も、外側からは見えないトラスのリブも、上手に埋め込まれた端部の高欄も、全てが破綻することなく収斂しているように感じた。いいものを見させていただいた。しかしこの橋を見ている最中、使徒がやってきたときの緊迫感のある音楽が、ずっと頭の中で流れっぱなしだったよ。