はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

露天掘り炭鉱ぐるり見学バスツアー


日曜日はドイツのRWEという電力会社が行っている露天掘り炭鉱見学バスツアーを下見してきた。結論から言うと、リスクを冒しても見に行くべきだね。わざわざ日本からこのためだけに来るのは、少々ギャンブル性が高いのだが、当たれば間違いなく大満足できる。もちろん、外れてがっかりする可能性も否定できないので、しっかりと他の救済策を用意しておくべきだろう。まあ海外旅行をするのにこのイベントだけってことはないか。
まず、現場に降り立つことを期待していると、バスの中からの鑑賞のみという当然の事実にがっかりする。なにしろ写真を撮ろうにもアングルは限定されるし、写り込みや窓の汚れが気になる。およそ1時間の道中、とても丁寧なガイドを聞くことができるのだが、もちろん全てドイツ語なのでさっぱりわからない。それでもバケットホイールエクスカベーターに接近したり、それが削り取った見事な斜面を目の当たりにする経験は、他では得がたいものだ。もしも雨に降られることなく、右列窓側の座席に座ったならば、きっと満足できることだろう。【追記:6月19日の回は左側の座席が正解でした。動いている現場なので、そのときどきによって変わるようです。】
当日の朝、天気予報をチェックすると、雨混じりの曇りとのこと。意気消沈して家を出るのにだらだらしてしまった上、途中の道路が工事中で迂回路を求めて少し迷ったため、案内にあったテニスクラブに到着したのが予定よりもやや遅れて11時前になってしまった。大きな駐車場には結構な数の車がすでに止まっており、傍らには仮設トイレや出店のテントがあったりする。おおやっぱり盛り上がっているんじゃないかと思って、やおらテンションが上がってきた。空には晴れ間も見えているし。
受付をするためにRWEと書かれたテントに足取り軽く直行し、職員と思われる男性に露天掘り炭鉱の見学をしたいと申し出たら、後ろのバスに乗りなとあっけらかんと言われた。あれ?名前を書いたりヘルメットを借りたりしなくていいの?と思いながらも、8号車と書かれた(後で確認したら10号車まであった)ほぼ満席状態のバスにいそいそと乗り込み、左列窓側の席に座った。ざっと見たところ、子供連れから老夫婦まで様々な年齢層の方々であったが、まわりからはドイツ語しか聞こえてこなかった。この見学会のことは同社のHPにとても遠慮がちに記載されている。大々的に宣伝しているわけではなさそうだし、車内の様子を見る限り、公益事業の企業がCSRとして行っている地域向けのPRイベントというテイストが濃厚なようだ。
ほどなくしてバスは発車し、若々しい緑の中を15分ほど走行すると、石炭を積んだ貨車が見えてきていよいよ炭鉱に近づいていることが感じられる。すると目の前にベルトコンベアが現れた。この延々と続くベルトコンベアはそれなりに楽しいのだが、概ね目の高さにあるので、周囲の風景はほとんど見ることができない。坂を下りきったところでバスが右折した。ここはどうやら石炭のターミナルのような場所らしい。数多くのベルトコンベアが輻輳していてすごく楽しい眺めだ。
左側の視界が開け、バケットホイールが削り取った斜面が見えてきた。いよいよきた!となったのだが、このあたりから次第に暗くなってきて、ぽつりぽつりときはじめた。なんというバッドタイミング。すると、前方からやってきたバスとすれ違った。7号車と書いてある。ん?このバスは8号車だよね?ひとつ前のバスがもう戻ってきているの?と若干不安になった。その不安に追い打ちをかけるように雨脚は強まっていく。
そしてやつの足下に来た。やった!バケットホイールエクスカベーターだ!バス降りて眺め倒したい!そんな欲求を知ってか知らずか、バスは右側の窓からやつがよく見えるように停車した。ちょっと!僕の席からはやつが見えないよ!バスの方向変えてよ!いや次のバスで帰るから降ろしてよ!なんてドイツ語で言えるはずもなく、雨の中じりじりとした時間を過ごす羽目に。そしてあっけなくバスは旋回し、いま来た道を戻りはじめた。左側の視界はベルトコンベアーによって遮られた状態が延々と続き、さらにストレスは高まった。
その後、覆土された(と思われる)エリア、草地になった(と思われる)エリア、樹林になった(と思われる)エリア、代替地の宅地開発(と思われる)エリアを通り、バスは最初の駐車場に戻ってきた。このあたりの環境復元が電力会社としては推したいところだろうが、こちらはガイドもわからず、すでにしょぼくれた状態だ。申し訳ないが全く理解できていない。そんな落胆した状態でバスを降りた。辺りはしとしと雨が降っていた。
とりあえず自分の車に戻り、お昼ごはんのお弁当を食べることにした。天候の回復を待つ作戦だ。ドキドキしながら空を眺めていると、少し明るくなってきた。お!これはもしや!と思い、いそいそと再びバス乗り場へ。待機中のバスはすでに乗車している人が多かったため、当然スルー。すると数分後にそのバスは出発し、次のバスがやってきた。要するに、満席になったら出発するのだ。今度こそ!と意気込んで、急いで右側の広い窓に接した席を確保。窓に水滴やらほこりやらが付いていたので、いったん降りてティッシュで窓ふきをした。2回目となると、落ち着いたものだ。ややしばらくして満席になり、無事に出発。待ち時間が最小のいいペースでバスが運行されている。きっとこれは経験の蓄積によるものなのだろう。
空はどんどん明るくなってきた。それに伴ってこちらも盛り上がってきた。そして、バケットホイールエクスカベーターに到着する頃には、なんと快晴になった。なんだこの落差の激しい天候は!しかも向きが変わってこちら側にホイールがある!かっこいい!でかい!ひゃっほう!と大興奮。上の写真はそのときの一枚。天候と視点が変わると、こうも印象が変わるものかと実感した。
バスツアーは来月19日にも行われる。行くよ!という方がいらっしゃれば、一緒に行きましょう。オプショナルツアーも検討しますのでご連絡ください。