はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ルーアンのタワーブリッジ


フランス・ノルマンディー地方の中心都市であるルーアンは、ジャンヌ・ダルクが処刑された地として有名で、まあまあ内陸部に位置しているにもかかわらず、パリの外港としてセーヌ川の水運で栄えた都市。どんだけ港町かと言うと、こんなとんでもない橋がつくられるほど。
これはギュスターヴ・フローベール橋(Pont Gustave-Flaubert)という、2008年に共用されたA150高速道路の可動橋。中央径間の桁が垂直に持ち上げられて、55mもの航路高を確保できるようになっている。なぜ高速道路の交通を止めてまで、これほど盛大に桁を上げなければならないのか、現地ではいまいちわからなかった。運搬船やクルーズ船は何事もなく普通に桁下を通過しているし、このひとつ上流の橋はクリアランスなんて素知らぬ顔をした良くある変断面の桁橋。街はセーヌ川をだいぶ遡ったところにあるので、超巨大豪華客船が入港できるような水深があるとも思えない。周辺環境もひなびた倉庫街や少々荒れた工業地帯で、ちょっと冴えない感じ。主な埠頭はこの橋の下流側にあるようだし。まあいろいろな違和感が満載なわけだ。
帰宅してから少し調べてみると、どうやらルーアンでは3〜5年おきに「帆船祭り(Armade de Rouen)」が盛大に行われて、世界中から帆船がわんさか訪れるのだそうな(何年おきに開催されるのかは参照したサイトによって記述がバラバラなので、いまいちよくわからない)。その際に、この橋の桁はグイグイっと持ち上げられるらしい。
そうした理由が判明しても、やっぱり違和感はぬぐえない。そのイベントも街にとってとても大切なものなんだろうが、こんなに高コストのものを整備することが最善の策だったのだろうか。イニシャルだけでなく、メンテナンスもかなり大変だろうに。それも何年かに1度のためだけってのは、精神的にもつらいわな。いやまあ、個人的にはこうした大まじめにつくられたバカっぽい構造物は大好物なのだが。