はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

スイス橋梁巡礼


今回の橋梁巡礼は、いよいよスイス。満を持して、と言いたいところだけれど、行程の組み立てが非常に難しく、かなりハードな巡礼スケジュールになっている。なにしろ、ロベール・マイヤール、クリスチャン・メン、ユルグ・コンツェットなど、スイスには見るべき橋が多すぎて、しかもそれらは広域に散らばっているのだ。たいていアルプスの奥深くの行きにくいところにあるし。しかし帰国日が近づき焦ってきたので、この際だから無茶を承知で勢いで行ってしまうことにした。
まだ巡礼の途中だけど、すでに大きな恍惚感に包まれている。なにしろ昔からあこがれ続けてきたアイドルとも言える橋を実際に見て触れて感じられるので。写真集などで見た印象と若干異なっていたり、抱いてきた印象がより補強されたりと、実物を体験しなければわからないことが目白押しで、ちゃんと消化できるかどうかが非常に不安である。
上の写真はベルン南方の深い森の中にあるシュバントバッハ橋。マイヤールの設計で1933年につくられた。床版が曲線の平面線形を描いているのに、補剛アーチ外側のラインを平面で見ると直線になっている。ろくに前例もないのに華麗な解き方をしていてびっくりする。この部材が薄いこと薄いこと。構造的経済的合理性を突き詰めて、それを造形的にまとめ上げたという、構造デザインのお手本のような橋であることが実感できたよ。
そうそう、ちょうどハイキングをしていたご婦人二人組と立ち話をしたのだけど、「ああマイヤールの橋を見に来たのね、すてきよね」と言っていた。地元の方にも愛されているんだね。