はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

スカルパの橋


ヴェローナという街に行った際に、カステルヴェッキオという古城を改修した市立美術館に立ち寄った。これが予想をはるかに超えた素晴らしい美術館で、とても大きな衝撃を受けた。動線の構成や作品の引き立て方が素晴らしく、素材を巧みに活かした繊細で丁寧なディテールや仕上げには舌を巻いた。興奮しすぎて予定時間を大幅に超過しとっぷり日が暮れてしまったので、翌朝のスケジュールを変更して外構を改めて見に行った。この改修はカルロ・スカルパという建築家が手がけたということはわかっていたのだけど、スカルパに関する知識はほとんど持っていなかった。まったくぬかってました、ごめんなさい、反省してます。
そんなわけで現在、スカルパの故郷であるヴェネツィアにて、氏が手がけたものを中心にサーベイを行っている。ヴェネツィアに到着するなり、ネットで見て大いに興味を引かれたクエリーニ・スタンパリア橋という小さなアーチ橋を見に行った。これがまた感動的な橋だった。まるで最高の職人がつくった工芸品のように、美しく繊細で凛としたたたずまい。ミニマルでありながら暖かみがあるとでも言おうか。ずいぶん日本的なテイストが含まれているなあと思っていたら、どうやらスカルパは日本文化に対する造詣が深かったらしい。しかも講演で仙台に来た際に足を踏み外してお亡くなりになったというつながりもあるようだ。
どうやらスカルパが生み出したものは僕にとってかなりのツボらしく、見れば見るほど好きになっていく。明日はレンタカーで少し遠出をして、スカルパのお墓参りをしようと思っている。