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はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

デザインによる技術発展


韓国の光陽と麗水を結ぶ、完成間近のイスンシン大橋。橋長2,260m、支間長1,545m(世界第4位)、主塔高262mというワールドクラスのスケールで、4年半というとんでもなく短い工期でつくられた吊橋だ。たいへんありがたいことに、この橋のデザインに僕も深く携わらせてもらった。
吊橋の架橋技術は経験工学におけるひとつの極みだと思う。つまり、韓国がこれだけの吊橋を架けられるようになったことは、技術力がいよいよ成熟してきた証である。逆に言うと、韓国は橋梁技術を世界に輸出していくための布石として、プライドをかけてこの橋に技術力を集結したのである。
そんな橋なので、外観もかなりこだわっている。その最たるものが、主塔の造形。裾広がりの緩やかなカーブで構成されたコンクリートの主塔は、極めてシンボリック。その面には角度が付けられており、陽の当たり方で微妙に表情を変わる。いやはや、狙い通りのかっこよさで本当にびっくりした。
主塔の断面形状は高さによって微妙に変化するので、高度な施工管理技術が必要となるのだけど、彼らはそれをやりきった。現場の技術者はとてもたいへんな施工だったと言いながら、ここで技術的経験を得られたので今後は変断面のコンクリートタワーが流行るかもねと語っていた。また、工期短縮のために水平材にスチールを用いることも検討されたそうだが、最終的には品格を重視してオリジナルデザインを実現するために技術的挑戦をしたとのことである。
いやほんと、この橋のデザインに携わらせてもらった立場からすると、感謝感激である。難度の高い造形を忠実に再現しているばかりか、その実現のために技術イノベーションが促されたのだから。あらためて橋のデザインの楽しさは格別だと思ったよ。