はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

水無池


丘陵地なんかで宅地開発が行われると、その土地が本来持っていた保水力が著しく低下して、下流域に甚大な溢水被害を引き起こす恐れがある。このため、一時的に雨水を貯留する「調整池」と呼ばれるプールがセットでつくられることが多い。どちらかと言えば、陽の当たる道を歩むことが少ない土木施設だ。非常時インフラの日常って、たいていそんな感じだよね。
調整池は沼地のふりをしていたり、緑地のふりをしていたり、駐車場や建造物などの地下に巧妙に隠されていたり、いろんな擬態をすることがある。その方が「景観との調和」という観点からはいいのだろうけど、でもやっぱりコンクリートで囲まれているものや、もともとの窪地をせき止めたりしているものの方がムズムズとした違和感を楽しむことができる。
先日横浜の郊外の住宅地で見た湘南桂台第二雨水調整池は、そんなムズムズをダイナミックに感じることができた。なにしろ規模がすごい。傾斜地に広がる宅地開発面積の広さ、宅地と池の底との高低差、下流に控えるダムの規模、巨大な調整池のぽっかり感や荒廃感、どこに着目してもなかなかしびれる逸品だよ。