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はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

一本の線

橋梁 形態


熊本県天草諸島の最南端、フェリーで対岸に渡ればもう鹿児島県という行き止まり的な場所に架かる「牛深ハイヤ大橋」。個人的には1997年に完成したときからずっと実物を見てみたかった憧れの橋。熊本市から3時間はかかるという立地なので、なかなか手を出せずにいたんだけど、昨年10月の九州調査旅行の際に、無理やりスケジュールにねじ込んで見に行った。それなりにたいへんだったけど、巡礼して良かったよ。
この橋の設計は、レンゾ・ピアノ(FBアルバム:Renzo Piano (Renzo Piano Building Workshop), Italy, 1937-)+ピーター・ライス(FBアルバム:Peter Rice, Ireland, 1935-1992)+岡部憲明という超豪華メンバー。このキャスティングが成立したのは、「くまもとアートポリス」プロジェクトのなせる技だろうね。ほんとにすごい事業なんだな、アートポリスって。
「湾に浮かぶ一本の線」というものすごくシンプルなコンセプトを、ものすごく複雑な形態操作や製作を経て、ものすごくさわやかに解いている。CFRP製と思しきフラップによる分節や陰影の創出とか、ブラケットによる高低差付き歩車分離とか、環境の色をうまい具合に拾って調和する超低彩度色とか、桁橋でありながら見る者をこれほどうならせるものって、そうそうないだろうなあ。
その一方で、この場所にこんな豪勢な橋が本当に必要なのかとか、アールのついた底面は手間がかかりすぎだろとか、建築家がかかわった橋はろくなもんじゃないとか、橋などない島と海の風景の方がよほど価値があるとか、まあいろいろと議論を呼んだ橋でもある。たしかに現地に行くと、本当に必要なのか?と言う疑問は確実に増大するんだよね。だって、そんなに車走ってないし、代替ルートもあるし。