はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

古城の軽い橋


カルロ・スカルパが手がけたヴェローナの「カステルヴェッキオ」には度肝を抜かれた。古城を改修した市立美術館なんだけど、動線や空間構成からディテールに至るまで、全く隙のない圧倒的な質の高さを体験することができるので、近くに行くことがあればぜひお立ち寄りいただきたい。建築マニアや美術マニアやカトリック教徒ではない僕でも、涙が出そうになるくらい感動できたよ。
スカルパは橋に対して並々ならぬ想いがあるんだろうね。カステルヴェッキオ美術館の中庭の隅っこにある、メイン動線から外れた小さな橋もぬかりない。鋳鉄のモダンでシンプルで素っ気ない橋なので、ぱっと見ただけでは意識に残りにくいのだけど、二度見すると周辺の遺跡的テイストに対比しながらも溶け込ませている細やかな仕事ぶりに感じ入ってしまう。
構造はドイツのネッカータール橋と同じように、空中にある支柱を両側に固定したケーブルで固定するというもの。もちろんこの架橋条件であればもっと単純で普通の構造にすることはできたのであろうが、まあ近代のアプローチでやりたかったんだろうね。
ヴェネツィアにあるクエリーニ・スタンパリア橋もとてつもなく素晴らしいので、併せてご覧いただきたい。