はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ダッチっぽい自転車橋

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オランダの東部のナイメーヘンという街に、つい最近開通したばかりの長大アーチ橋を見に行ってきた。ベルギーを拠点に活動している構造設計家のローラン・ネイ氏によるものだ。たっぷり時間をかけてその橋を見た後に、次の目的地に移動しようと車を走らせると、極めて魅力的な橋に出くわした。

その橋はくすんだ黄緑色で塗られた、V字脚を有する鋼ラーメン橋である。いかにもダッチっぽい色彩に目を奪われつつ、引き締まったプロポーションにハッとなった。なんだこの橋、ダッチっぽいのにクオリティがものすごく高いんじゃないかね。

やや離れた所に車を止めて、ワクワクしながら近寄ってみた。なんと、道路線形がS字を描いているのだが、脚部もその線形に沿って立体的に曲がっているではないか。こりゃものすごく複雑な形状だ。さらによく見てみると、異様にソリッドでシャープなエッジで構成されている。通常の橋梁では、鋼板同士を溶接する場合はどちらかの板を飛び出させるのだが、この橋の場合はほぼ一致している。つまり、ほとんど誤差がないのだ。この複雑な形状をこの精度で製作するってのは、尋常な仕事ではない。それだけにとどまらず、各部材の端部処理や高欄などの細部も極めてよく整えられている。

いやぁこりゃまいったな、オランダの橋梁ってどこか垢抜けなくて隙があったのにそれが身を潜めてしまったな、なんてことを感じつつ、ステキなものを偶然見つけたという満足感に浸った。

その日の夜、気になっていろいろな方向から調べてみたら、少しずつこの橋のことがわかってきた。橋の名前は「't Groentje」であることや、昨年の8月に開通したばかりであることなどに加えて、なんと設計はローラン・ネイ氏であることが判明した。ああそうなのか、それならば合点がいくなあ、言われてみると氏のデザイン言語で構成されているなあ、なんてことを反芻しながら、事前の調査が不足していたことを反省した。