はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

地底駅

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先日糸魚川方面に車で行った際に、JR北陸本線の筒石駅に立ち寄ってみた。大都市における地下鉄駅とは異なり、山岳トンネルの途中にホームがあるというレア物件。しかも、かなり深い地中にあるとのこと。わかるようでいて、よくわからないよね。

国道8号線を降りて小さな筒石集落の細い道をぐんぐん登り、案内看板に従っておよそ鉄道駅があるとは思えない山の中に入ると、ぽっかりとした平場に数台の乗用車とプレハブ小屋がある。雰囲気は建設現場にある仮設の小屋だが、それこそが筒石駅舎なのだ。そこで初老の駅員さんから入場券を買い、「入坑・入場証明書」なるものをいただき、つい先ほど列車が到着したことと、もうすぐ列車が通過することを教えてもらった。珍駅に興味がある人への配慮がしっかりなされているんだなあとうれしくなり、ワクワクドキドキ感とともに先へと進んだ。

すると、地底に降りるおよそ250段の長大階段が目の前に。ウヒヒと写真を撮っていると、遠くからおそらく地元のおばちゃんが息を切らせながらゆっくり登ってきた。軽く挨拶をして先を見ると、適度な距離を保ちながら若い女性の駅員さんがゆっくり登って来た。なるほど、列車が到着するたびに、ホームの安全確認のため現場に行かなければならないのか。ちょっとした挨拶とともに健康にいい職場ですねなどと軽口を叩いてみたものの、彼女がここに赴任する辞令を受けたときの感情はどんなものだったのか、想像はできなかった。

さて、最下部に到着すると、待合室があった。そこには3D文字をふんだんに用いたやんちゃなカラーリングとレイアウトの貼り紙があり、「通貨列車は相当なスピードで入ってきます 十分注意してください」と書かれていた。それを目にしたとたん、遠くの方からゴゴゴという地鳴り音が聞こえるとともに、かすかな風が吹き始めた。おっ、これは!と思い、急いで待合室の扉を開けて外に出た。

ところが、外に出たつもりが、上の写真のようなトンネルの中に入ったわけで。はっ!?というクラクラ感は、ちょっとしたSF的瞬間移動体験だよ。ちなみに上の写真はかなり明るく加工している。実際はときめくほどに暗いのでご安心あれ。

貼り紙どおり、生命の危機を感じるほどの迫力で列車が通過した後、じっくり地底ホームを堪能した。上下線のホームは千鳥配置になっていて、トンネルの中心もずれていることが確認できる。多少利用面で不利になっても、軸方向に拡張することで大断面を避けてコストダウンを図っているんだね。まあ利用面で考えると、合計300段近い高低差ってところがすでにアウトだもんな。

軽い気持ちで立ち寄った駅だったが、すごく楽しい体験ができたよ。近くに行くことがあれば、ぜひオススメしたい物件である。