はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

山奥にある幻の村

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明治の頃から脈々と続けられている立山カルデラの砂防事業は、あまりにも雪が多い日本アルプスの山頂付近が現場であるため、6月から11月までの半年間しか工事を行うことができない。現地を案内してくださった方は「100年の現場だけど、50年分しかやっていない」という、とても印象的なことをおっしゃっていた。

その最前線基地は、カルデラの出口付近にあるほんのわずかな平場の「水谷平」にあり、現場が動く時期には工事関係者が半年間だけ暮らす「幻の村」が出現する。建物の多くはしっかりした基礎のないプレハブづくりだし、土留めの擁壁は古タイヤを積み上げただけだったりする。つまり、この村全体が「仮設」なのだ。

そんなことが影響しているのかもしれない。立山砂防事務所水谷出張所から見た村の眺めは、トロッコの軌道も含めて、まるでミニチュアのように現実感が無い風景に見えてしまうんだよね。まさに「幻」と呼ぶのにふさわしい雰囲気が漂っているよ。