はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

メリハリのある炭鉱

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かつて石炭を産出していたベルギーのヘンクという街には、カンファレンス、カルチャーセンター、デザイン系専門学校、映画館などの複合施設である「C-mine」がある。もちろん、もともとの炭鉱施設を利用した炭鉱関連の資料館も併設されている。以前にはここで体験できる「坑道ツアー」のことを紹介したが、外観についてはまだ触れていなかったね。

上の写真のように、やけに広い場所にニョキッと2つの竪坑櫓がそびえており、その回りをレンガ造の施設が取り巻いている。大味にも思える大胆な空間構成で、コントラストの強いクールな印象を受けた。施設全体もクールにまとめられているのかと思いきや、映画館も含めてアミューズメントの方向にガツンと振っている要素も多い。

シークエンス体験でも随所に高コントラストを意識したであろう部分が散見された。例えば、この平場の地下は駐車場になっており、そこから地上に出たとたんに首の旋回を伴うこの風景を目の当たりにする。また、坑道ツアーで地下トンネルを進むと螺旋階段をどんどん登って最終的に写真左の竪坑櫓の頂上に到達するのだけど、中段のところに到達するまでは暗く覆われている。地下にいると思っていたら、いきなり高所に放り込まれているわけだ。

このように振れ幅が大きくて、それらが高い水準で上手くバランスしている施設ってのは、とても印象に残るよね。日本でも完全に民間の施設ならば可能かもしれないが、官が主体になるプロジェクトでこのようなメリハリを実現するためには、いろんな苦労を乗り越えなければならない。あれやこれや注文が付いて、せっかくの尖った部分を丸くしてしまうのが世の常なので。まあそれを乗り越えようとしているうちに疲弊してしまうことの方が多いだろうなあ。あ、官が悪いという意味ではないよ。システムや慣習からくる構造的な問題のことだよ。