はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

欧州の大きな谷

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欧州の谷って、日本の谷のイメージとはだいぶ雰囲気が違う。簡単に言ってしまえば、スケールの違い。日本の場合は極めて繊細かつ急激に変化する微地形が絶え間なく表層を覆っていることに対して、欧州の場合は広大な丘陵地と幅の広い谷がゆったりと繰り返すという印象。日本の感覚から言うと、どこでもそれなりの街として成立するポテンシャルがあるように感じるが、さすがは大陸であるだけに、もっと高いポテンシャルの場所に都市が発達している。つまり、谷部の多くは農地としては利用されているものの、街はぽつらぽつらとある程度だったりする。

このような地形に、制限速度がなかったりする高速道路のアウトバーンを通そうとすると、自由度が高い丘の上をメインで通したくなる。そうすると、谷部は一気に高橋脚で越えることになる。深い谷の場合でも容赦ない。1979年につくられた9径間連続PC箱桁橋のコッハー橋(Kochertalbrücke)は、橋長1128m、支間長138m、橋脚高さ185mというスーパースケール。それにしては、各所が徹底的にスレンダーかつシンプルにまとめられていて、ストイックなかっこよさを纏っている。

2004年に生まれたスーパースターのミヨー橋に譲るまでの長い間、最も高い橋脚の高架橋だったようだ。まあ記録が抜かれても、この橋は悔しがったり悲しんだりせず、淡々と自分の仕事を続けているんだろうね。若干無理があるかもしれないが、この2つの橋を見比べると、ドイツドボクとフランスドボクのスタンスの違いが透けて見える気がするな。