はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

背が低い水門

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昨年の秋口に島根を駆け足で巡ったとき、宍道湖畔の「岸公園」と、菊竹清訓が手がけた「島根県立美術館」もチラ見しておこうと思い立った。駐車場にレンタカーを止めて、とりあえず周辺をぐるりと歩き始めると、2門のライジングセクタゲートを備えたかっこいい水門が目に飛び込んできた。銘板を見ると2015年にできたばかりのようだ。こうなると、公園や美術館はそっちのけで、この水門を眺め倒しちゃうよねえ。

周辺景観を何も考えなければ、おそらく3つの上屋と2つのでかい板面が露出するローラーゲートの水門になっていただろう。そうすると、地域のアイデンティティの源泉であろう宍道湖畔の景観が、ものすごい勢いで遮られてしまう。きっとそんな話が前提としてあって、背が低く済むライジングセクタゲートを選んだんだろう。

ゲート形式だけでなく、造形、仕上げ、高欄、舗装など、細部に至るまでとても上品にまとめられている。そもそもが目立たないことを善しとするデザインコンセプトなんだろうから、誰も気を留めないってのが一番の成果だろうね。でも、僕だけは君のステキさに気付いているよ、と小さな声でささやきたい。若干変態っぽく。