はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

講演会雑感

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先週の土曜日は、写真家の柴田敏雄氏と構造デザイナーのローラン・ネイ氏の対談講演会を聴講した。品川のキヤノンギャラリーで開催されていた写真展「Bridge」に関連したものだ。

講演の内容から察するに、柴田氏は請け負い仕事を滅多にしないようだけど、ネイの依頼は撮った写真をどうするのかの計画はない」という面白そうなものだったので、引き受けたとのこと。ネイとしては、人工景観をモチーフにしてきた一流の写真家が、自分の造形物をどのように切り取るのかということに、強い興味があったことが伺える。

柴田氏の撮影スタイルは、車を運転していて気になった風景を一期一会のように撮るというもので、今回のように同じ被写体にじっくり向き合って何度も訪問するということはあまりないという。実際の橋を何度も体験し、ネイ本人からの解説を聞いて撮っているようなので、結果的に設計の重要なポイントが、的確に写真におさまっている。なんというか、説明的な雑味のないシンプルな写真だ。

決してトーク自体は盛り上がるものではなかった。正直に言えば、だらだらしてつまらない部類だった。しかし、写真作品と実橋を比べてみると、会場で語られていた言葉の意味が重みを持って理解できる。やはり表現媒体を持っている人は、言葉よりも作品で語るってことなのか。落ち着いて自分が撮った写真と見比べながら、講演会を聞きに行ってよかったなあと噛みしめている。

上の写真は、二人とも詳細に解説してくれていたアムステルダムの再開発地区に架かるフルハトハーフェン橋(Vluchthavenbrug)。プレートを曲げてつくられた一瞬ギョッとするようなフォルム、リズミカルに波打つ路面、照明や排水の機能も盛り込まれた高欄などを備えている。自分の写真を見ていると、説明的な雰囲気が強すぎて、嫌になってくるな。