はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

港との距離

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国家や都市のバックヤードを担っている港湾って、グローバル化とともにその規模が大きくなるに従って、どんどん市民生活から離れていき、リアリティを失ってきているように思う。それは、様々な形態の貨物を合理的に大量運搬可能にした「コンテナ」という物流システムを、たった60年前にマルコム・マクリーンが再発明したことが大きく影響しているだろう。

良かれ悪しかれ、都市だけでなく社会の構造を根底から覆してしまった大事件。そのことを実感するには『コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった』(マルク・レビンソン、日経BP社、2007)を読むといいだろう。ずいぶん前に大山顕さんに勧められて読んだのだが、あまりにも面白い「物語」であり、うっかり目に涙を浮かべてしまうこともしばしばあった。

シンガポールという国の発達は、コンテナ抜きで語ることはできない。巨大コンテナ船に対応した港湾インフラを、ものすごい規模とスピードで開発し、国際ハブ港としての地位をあっという間に手中に収めたためだ。ちゃんと50セント硬貨の図柄にもなっている。

もともと小さな国であるだけに、高さ方向に伸びる都市と、近代港湾との距離が異様と言えるほどに近い。このため、数多くの場所からいろんなタイプの物流景観を眺めることができる。これほどコンテナを心ゆくまで楽しめる都市というか国って、他にないのではないだろうか。バルセロナ港を訪問したときにはここ最高! って思ったけど、シンガポール港ははるかに超えてびびったよ。

以前つくったタイムラプス動画(Singapore Container Terminal)を貼っておくので、のんびりお楽しみください。時間を圧縮した動きはコンテナシステムにフィットするね。ちなみに最初にアップした低解像度版をチラ見したら、再生回数が10万回を越えていてビビった。なんだ、やっぱりみんな好きなんじゃん。

コンテナ物語

コンテナ物語