はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

いけす遺跡

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昨日は10人乗りのレンタカーで津田沼の職場を朝9時に出て、房総半島の太平洋側の勝浦市を訪問し、夜9時に職場に戻った。そのうち往復の移動時間はたっぷり4時間。地元の方々は首都圏から遠いと自嘲的に語ることが多いが、時間距離があるからこそのメリットがたっぷりありそうな予感。「半島」とはよく言ったもので、まさに「島」のような魅力に満ち溢れているのだ。これから何度も勝浦を訪問する機会がありそうなので、楽しみで仕方がない。

最初に以前から興味があった海洋建造物の「海中展望塔」に行ってみた。もちろん展望塔自体もたいへんエキサイティングだったのだが、そこに至るアプローチが本当に素晴らしかった。勝浦の地理地形と、そこに由来する海洋文化、さらには1980年代に流行った海洋リゾートの影響をひしひしと体感できるので、訪問することを心の底からオススメする。

その見どころのひとつが、大量に残されている「いけす」の遺構。全体が砂岩や泥岩からなるリアス海岸に、若干無秩序でフリーダムな雰囲気が漂う人工プールがいくつも放置されているのだ。そのゆるい遺跡感に大興奮。僕らが訪問した時間帯は、おそらく干潮だったのだろう。子どもたちを含む多くの人々が磯で腰をかがめてトコブシやウニなどを採っていたもんなあ。

ずいぶん前に函館の戸井町で、大量に水揚げしたニシンを保存するための「袋澗」という石造施設の遺構を見たことがあるので、すぐに一時貯蔵システムだとピンときた。いつの頃かはわからないけど、冷蔵技術や輸送システムが高度化したことで必要とされなくなったんだろうね。いけすの周囲には水路のような溝や穴が空けられているので、潮の干満差をうまく取り込んだシステムなんだろうなあ。また地元の方に、満潮の際に鰯の群れをいけすの上に追い込んで干潮を迎えると、いけすにたっぷり鰯が入っていたという話を伺った。どこまでが本当の話かは定かではないけどね。いずれにしても、もっと調べてみたいなあと思わせてくれる遺跡だよ。