はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

本当のチェーンブリッジ

f:id:hachim:20170919115140j:plain

チェーンブリッジと言えば、ハンガリーのブダペストを貫流するドナウ川に架かる吊橋「セーチェーニ鎖橋」。いつか見に行きたい。それはさておき、ブータンでは鉄の鎖そのものに金網を載せて、それらを針金で結束するという、まるでアスレチック遊具のような原初的な橋を見た。たいへん感動したわけだが、一部の鎖が切れているといった危険な状態のようで、残念ながら渡ることはできなかった。かつてはなんらかの床版があったのだろうけど、この地を再訪した同行者から少なくとも一年前はこのワイルドな見た目で運用していたという驚きの証言を得て、心からうらやましく思った。

この橋はタチョ・ラカン(Tachog Lhakhang)という寺院にアクセスする橋。1400年代にこの橋のオリジナルを架けた人物はタントン・ギャルポ(Thangtong Gyalpo, 1361-1485 ← 諸説あり)と言われ、チベット仏教の偉大な高僧。哲学、医者、鍛冶、芸能、建築、土木など、弘法大師やダ・ヴィンチを凌ぐようなマルチなプロデュース能力を発揮した聖人という。個人的には鉄の精錬技術を導入したことあたりに強く興味をそそられる。

本当のオリジナルかどうかはわからないけど、以前の橋は1969年の洪水で大破したようだ。その後、先代ワンチュク国王の命により、保管されていた部品を使って2005年に復元されたとのこと。その際に橋台の位置を高くしたような記述もあった。いずれにしても、ブータンの大胆すぎるチェーン吊橋、渡りたかったなあ。そのうちにまた復元されるのかもしれないが。その他にもタントン・ギャルポが架けたと言われる橋が複数現存しているらしいので、チャンスがあれば巡ってみたい。その前に、しっかりとした知識を仕入れておかなければね。

ちなみに、橋に取り付けられて風に吹かれる五色の旗は、ルンタと呼ばれるお経が書かれた布。青・白・赤・緑・黄は天・風・火・水・地に対応しているらしい。ブータンではあらゆる事物がチベット仏教に深く根ざしているのだな。

参考:eTurboNews : Bhutan’s amazing iron chain bridges
   A.B.Travel : Tachog lhakhang
   Rangjung Yeshe Wiki - Dharma Dictionnary : Thangtong Gyalpo