はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

基幹産業ダム

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たいへん幸運なことに、ブータンでの集落調査の研修として、1986年につくられたブータン初の水力発電用ダム「チュカ水力発電所(Chhukha Hydropower Plant)」の見学が許可された。天端も堤体内部も下流側も、たっぷり時間をかけて堪能させていただいて大興奮。下流面の姿もとてもかっこよかった。でも、写真撮影は一切禁止だったので、ゲートの手前から撮った写真を載せておくね。記憶が定かなうちにと、帰国後にネットで下流面の写真を探してみたのだけど、かつて発行された切手の図柄しか見つけられなかった。

見学に同行してくださったブータン政府のエンジニアは、自分たちのサラリーを生み出してくれているのがこのダムなんだ、とおっしゃっていた。ブータンの財政を支えているのは水力発電事業であり、そのためのダムは極めて重要な施設ってわけだ。どうりでセキュリティレベルが高いわけだ。そして、上の写真でも確認できるように、たいへん立派なレリーフによって飾られていることもうなずけるね。

チュカ・ダムでは発電量の95%をインドに送っているという。実際に現場を案内してくださったダムの技術責任者は、インドの方だった。おそらく運営そのものもインド側が手がけているのだろう。なお、現在ブータンでは4つのダムが稼働しており、さらに6つの巨大発電プロジェクトが平行して実施されているとのこと。資本はやはりインドが中心らしい。

そうそう。下流側上端部が大胆に削られて鉄筋がもろ出しになっていた。なんの工事をしているのかを尋ねてみたところ、少々聞き取れないところがあったが、ラジアルゲートの駆動システムをワイヤーによる巻き上げから油圧シリンダーに変更する工事をしているようだった。建設から30年経ってローンの返済は終了したけど、メンテナンスと機能向上のために出費が求められているんだね。

ちなみに本当にすごかったのは、このダムに降りるつづら折れの沿道の、ちょっとここには書けない光景だった。ブータンの現実がおぼろげながら体感できたな。